
素行調査の実録|9,000万円の損害賠償請求を30万円に変えた、詐病を暴く尾行調査
身体障害者2級と認定され、9,000万円の損害賠償を請求してきた男。だが、その体は本当に不自由なのか——。傷害罪で逮捕・起訴された会社員を救ったのは、探偵が撮った数本の映像でした。東京を拠点に30年、企業からの依頼にも応えてきた私が手がけた、詐病(仮病で病気やケガを装うこと)を暴いた調査の記録です。
公園の小さな諍いが、9,000万円の裁判に
ことの起こりは、ささいな言い合いだった。ある清掃会社の社員(55歳)が、早朝、大きめの公園を掃除していた。すると、ベンチで子犬を抱いた60歳前後の男が、ハサミで犬の毛を切っている。毛が飛び散らかるので、社員はやんわりと注意した。少しばかりの口論になったが、その場は互いに離れて、収まったはずだった。
ところが、社員が別の場所を掃いていると、その犬の飼い主が、ハサミを手に掴みかかってきた。思わず社員は、持っていた熊手の柄で、2度ほど応戦する。その程度で、争いはすぐに終わった。誰が見ても、たいした出来事ではない。
だが、話はそこで終わらなかった。後日、犬の男——仮に山田としよう——が、会社宛てに損害賠償を請求し、さらに社員を傷害罪で警察に告訴したのだ。社員は逮捕され、起訴、勾留される事態となった。山田の主張は、こうだった。「熊手の柄で首を殴られて負傷し、両腕がまったく上がらず、排泄すらままならない。身体障害者2級に認定された」。そして会社に対し、雇い主としての責任(使用者責任)を問い、9,000万円もの損害賠償を請求してきたのである。
「その障害は、本物なのか」
この請求に、待ったをかけたのが、会社側の弁護士だった。「熊手の柄が首に当たった程度で、排泄もできない状態になるというのは、非現実的だ」。そう考えた弁護士から、弊所に調査の依頼が入った。正式な依頼者は、清掃会社の社長である。山田の、普段の暮らしぶりを追ってほしい——それが、依頼の内容だった。
両腕が上がらず、排泄もままならない。もしそれが本当なら、日常生活は、介助なしには成り立たないはずだ。だが、もし嘘なら——その仮面は、尾行すれば必ず剥がれる。素行調査が、静かに始まった。
パチンコ台に、身を乗り出す男
午前中、山田の自宅前から尾行を開始した。ほどなくして、山田はパチンコ屋へと入っていく。両腕が上がらないはずの男が、である。私は探偵を増員し、計5名で、山田を囲むように店内へ配置した。
山田は、涼しい顔でパチンコを打っていた。ここで、一つ仕掛けることにした。若い女性の探偵に、山田の隣の台に座らせ、「パチンコが分からないので教えてほしい」と、声をかけさせたのだ。
効果は、てきめんだった。山田は、下心を隠そうともせず、女性探偵の台に身を乗り出してくる。腕をぐいと伸ばし、狙うべき釘の位置を、指で示して教え始めた。両腕が上がらない人間に、できる動きではない。その一部始終を、別の探偵が、ビデオに収めていた。
やがて、女性探偵の台に「777」が揃う。「揃ったけど、どうすればいいの?」と尋ねると、山田は身振り手振りで、そのやり方を教えてくれた。玉が出終わったあと、女性探偵がお礼にと缶コーヒーを渡すと、山田はそれを片手で器用に開け、うまそうに飲み始めた。片手で缶を開ける。これも、腕が上がらない人間には難しい動作である。
ラーメンと、瓶ビールと、酌の仕草
昼過ぎ、山田は自分の台に玉を残したまま、いったん表へ出た。そこで50歳前後の女性と合流し、食堂へ入っていく。すかさず、男性探偵2名が後を追い、店内で様子をうかがった。
山田は、ラーメンをすすりながら、瓶ビールを飲んでいた。それだけではない。向かいに座った女性に、ビールを注ごうと、瓶を持ち上げて酌の仕草までしてみせる(女性は「いらない」と断っていたが)。腕が上がらないどころか、瓶を片手で操り、他人に酌をする余裕まである。どこをどう見ても、健常者だった。もちろん、その様子も、探偵のカメラは逃さない。
夕方4時過ぎ、山田はパチンコ玉を景品交換所で換金すると、国道に出て、大きく右手を挙げてタクシーを拾った。右手も、高々と挙がっている。向かった先は、山田の妻が営む居酒屋だった。そして夜11時過ぎ、相当な酒好きなのだろう、歩くのもおぼつかないほど泥酔した山田が店から出てきて、またタクシーで帰宅。体を揺らしながらも、自宅の鍵を開けて中へ入っていった。初日から、じゅうぶんすぎる撮れ高だった。
それから毎日のように、山田は同じ行動を繰り返した。パチンコ屋へ行き、居酒屋で泥酔し、帰宅する。その一日一日が、彼の「障害」が偽りであることを、静かに、しかし確実に証明していった。
留めの一手
ここで、もう一つ、決定的な映像を押さえることにした。山田は毎晩、酩酊状態で帰宅する。そこで、山田の自宅の鍵穴に、ほんの少しだけ細工をして、鍵が回りにくくしておいた。
その夜も、居酒屋から泥酔して帰宅した山田は、自宅の鍵と格闘することになった。回りにくい鍵を、なんとか開けようと、両手を使い、体をかがめ、10分近くも鍵穴と悪戦苦闘する。その姿を、探偵はしっかりと撮影した。両腕が上がらず、排泄もできないと訴える男が、酔った体で器用に鍵を操ろうと粘り続ける——これ以上ない、雄弁な映像だった。
9,000万円が、30万円に
こうして集めた映像と報告書を、弁護士が裁判所に提出した。結果は、劇的だった。
まず、社員の傷害事件について。当初、社員には懲役2年が求刑されていた。だが、裁判所は、弊所の報告書を受け取ると、判決の言い渡しを一度、延期した。そして最終的に、求刑2年に対し、異例とも言える罰金10万円で、この刑事事件は幕を閉じた。逮捕・起訴まで追い込まれた社員は、こうして救われたのである。
そして、9,000万円の損害賠償請求。こちらは、判決で、わずか30万円の支払いを命じるにとどまった。9,000万円が、30万円。300分の1である。山田が主張していた「身体障害者2級」の実態が、映像によって、完全に覆された結果だった。
この調査が教えてくれること
後日談があります。この件について、担当の検事が、会社側の弁護士に「冤罪事件を作らずに済んだ」と、礼を言ったそうです。もし探偵の映像がなければ、山田の一方的な主張が通り、罪のない社員が実刑を受け、会社は9,000万円を支払わされていたかもしれません。事実を映像で示すことが、一人の人間の人生と、一つの会社を守ったのです。
なお、山田の首には、レントゲンに映る古い傷があったのだろうと推測されます。おそらく、それを利用して「身体障害者2級」の認定を得ていたのでしょう。書類の上では「障害者」でも、実際の生活ぶりはまったく違う。その食い違いを暴けるのは、机上の議論ではなく、地道に本人を追い、事実を記録する調査だけです。
私たちの仕事は、浮気調査だけではありません。今回のように、企業が理不尽な請求や裁判に巻き込まれたとき、その真偽を確かめる調査も、探偵の大切な役割です。詐病や不当請求、従業員の不正など、「どうもおかしい」と感じることがあれば、泣き寝入りをする前に、まず事実を確かめることをおすすめします。東京・足立区を拠点とする弊社では、個人・法人・弁護士からのご依頼を問わず、初回のご相談を無料で承っています。まずは無料相談フォームから、お気軽にご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 詐病(仮病)を疑っていますが、調査で証明できますか?
A. 可能な場合があります。日常の行動を継続的に記録することで、主張されている症状と実際の生活ぶりの食い違いを、客観的な映像や写真として押さえられることがあります。裁判や保険の場面で、有力な証拠となり得ます。
Q. 会社が損害賠償を請求されています。法人でも依頼できますか?
A. はい、依頼できます。企業が理不尽な損害賠償請求や労使トラブルに巻き込まれた際の事実確認調査も、数多く手がけています。弁護士と連携し、裁判で通用する証拠の収集をお手伝いします。
Q. 探偵が集めた証拠は、裁判で有効ですか?
A. 適正な方法で収集された証拠は、裁判の資料として活用できます。弊所では、弁護士と連携しながら、裁判の場で通用する形での報告書を作成しています。証拠の使い方については、弁護士とご相談のうえ進めるのが確実です。
Q. 弁護士から紹介された場合でも相談できますか?
A. はい。弁護士からのご紹介や、弁護士と連携しての調査も数多く行っています。法的手続きを見据えた証拠収集が必要な場合は、弁護士と探偵が連携することで、より確実に進められます。
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※本記事は実際の調査に基づく記録ですが、依頼者および関係者のプライバシー保護のため、氏名・地名・日時・金額など個人を特定しうる情報は伏せ、もしくは変更しています。



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