素行調査の実録|婚約者がいる息子はなぜ帰らないのか|探偵が追った1ヶ月

素行調査の実録|家に帰らない息子を案じた老夫婦の依頼と、探偵が見届けた本当の理由

仕事には行っているのに、1ヶ月以上も家に帰らない。婚約者にも連絡を取らない。いったい何があったのか——。息子の身を案じた老夫婦の依頼から始まった素行調査は、両親の想像をはるかに超える結末へとたどり着いた。東京を拠点に30年探偵をしている自分が立ち会った、ある家族の物語である。

家に帰らない息子を案じる、老夫婦からの依頼

その依頼者は、70歳ほどのご夫妻だった。穏やかな、品のある二人。だが、その表情には、隠しきれない不安の色がにじんでいた。

相談の内容は、息子のことだった。32歳になる息子が、もう1ヶ月以上も家に帰ってこないという。仕事には、きちんと行っている様子だ。失踪というわけではない。だが、おかしいのは、婚約者がいるにもかかわらず、その彼女にすら連絡を取らずにいることだった。心配する婚約者を放っておいて、いったい何をして、何を考えているのか。両親には、まるで見当がつかない。

「あの子に、何が起きているんでしょうか」

すがるようなその問いに、自分は素行調査を引き受けた。息子さんが、退勤後にどこで何をしているのか。それを確かめるところから始めることにした。

退勤後の、二人連れ

調査は、息子さんの勤め先の前から始まった。足立区にある、従業員100人規模ほどの会社だ。午後6時半、通用口から出てきた本人を、写真と照らし合わせてすぐに特定できた。写真の印象とほとんど変わらない、穏やかそうな青年だった。

彼は一人ではなかった。同僚らしき男性と二人、にこやかに談笑しながら、西新井駅へと歩いていく。仲の良い同僚と一杯やりに行くのだろう。その時点では、ごくありふれた、会社帰りの光景にしか見えなかった。我々は、その後ろを追った。

二人は西新井駅から電車に乗り、北千住で日比谷線に乗り換えた。車内はそれなりに混んでいて、他の乗客と体が触れる程度の距離。まだ、特別なことは何もない。だが、銀座で丸ノ内線に乗り換えたあたりから、調査員はかすかな違和感を覚え始めた。車内はさほど混んでいないのに、二人の距離が、やけに近いのだ。

そして、新宿。電車を降り、改札を抜けるころには——二人は、手を繋いでいた。

その瞬間、婚約者に連絡を絶っていた理由が、少しだけ見えた気がした。会社の同僚同士、という最初の見立てが、音を立てて崩れていく。

新宿の夜

手を繋いだまま、二人は新宿の繁華街へと歩いていった。一軒の居酒屋に入り、1時間ほど飲み食いをする。さすがにこのときは、隣同士に座ることはなかった。だが、店を出て10メートルも歩くと、二人の手は、また自然と繋がれた。ごく当たり前のことのように。そして二人は、一軒のバーへと入っていった。

これで、状況はおおよそ見えてきた。婚約者に連絡を取らず、家にも帰らない。その裏には、両親の知らない生活があったのだ。

夜11時半ごろ、二人は店を出た。新宿駅まで歩き、電車で西日暮里へ。路地を入ったところにある、二階建てのハイツのようなアパートの一室に、息子さんは入っていった。おそらく、ここで寝泊まりしているのだろう。その日の調査は、そこで終えた。

その後も、何日か退勤後の調査を続けた。だが、毎回あの同僚と帰るわけではなかった。コンビニで買い物をして、一人でネットカフェに消えていく日もある。彼の生活は、両親が思い描いていたものとは、まるで違う輪郭を持っていた。

女性調査員への、接触

調査4日目。この日は、女性の調査員が尾行の先頭に立った。西日暮里で下車した本人を追っていたとき、思いがけないことが起きた。本人のほうから、女性調査員に声をかけてきたのだ。早い話が、ナンパである。どうやら彼は、酒が入ると男女を問わず距離が近くなるたちのようだった。女性調査員は20代半ばで、容姿も悪くない。声をかけられても、不思議のない状況ではあった。

連絡を受けた自分は、少し考えてから「付いて行って」と指示を出した。むろん、彼女一人をやるわけではない。周囲には、3人の男性調査員が、さりげなく目を配りながら付いている。万一のことがあれば、すぐに動ける態勢だ。

女性調査員は、本人に誘われるまま、西日暮里のバーに入った。自分は彼女にLINEで「できるだけ、相談に乗るような雰囲気に持っていって」と伝えておいた。

酒が進むと、本人は、女性調査員に身の上話を始めた。嘘も飾りもなく、彼は語ったという。両親が話してくれた通りの境遇を、そして、自身の性的指向についても。婚約者がいながら、別の相手にも惹かれてしまう。その狭間で、彼自身、出口の見えない葛藤を抱えているようだった。家に帰れなかったのは、逃げていたのではなく、答えの出ない問いと、一人で向き合っていたのかもしれない。

ホテル前の、緊張

だが、調査には別の緊張も走った。店を出たあと、ホテルに誘われる展開も十分にありうる。そのときに備え、3人の男性調査員は、いつでも割って入れる距離で二人を囲んでいた。

そして、悪い予感は当たった。酔いも手伝ったのだろう。本人は、ホテルの前で突然、女性調査員の腕を取って、中へ入ろうとした。

男性調査員たちに、緊張が走る。あと一歩踏み込めば、救出に動く——その寸前だった。だが、女性調査員が毅然と断ったことで、本人もそれ以上は強いることなく、その場は事なきを得た。二人は、そこで別れた。調査員たちの間に、ようやく安堵が広がった。プロとはいえ、仲間を危険な状況に置くのは、いつだって肝が冷える。

父親への、報告

すべての調査を終え、自分は報告の段取りに頭を悩ませた。この内容を、あのご夫妻にそのまま伝えていいものか。とりわけ、母親には刺激が強すぎるだろう。熟慮の末、父親にだけ事務所へ来てもらうことにした。

報告の日。自分は、調査で判明したことを、一通り淡々と伝えた。息子さんが過ごしていた日々。そして、本人が語ったという、自身の葛藤。誇張も、断罪もせず、ただ事実だけを。

聞き終えた父親は、取り乱さなかった。深く沈み込むでもなく、ただ、肩をほんの少し落とした。長い沈黙のあと、ようやく口を開いた。

「ありがとうございました」

その一言を残して、父親は事務所を後にした。

この事件が教えてくれること

この報告には、「これが原因だ」という、明快な結論はなかった。婚約者から距離を取った理由も、家に帰らなかった理由も、すべてを一本の線で説明できるわけではない。ただ、息子さんが、人には言えない深い葛藤を抱えていたのだろう——そういう、少し曖昧な形で、この調査は幕を閉じた。

人の心の内は、他人がきれいに割り切れるものではない。家族であっても、わからないことはある。我々にできるのは、事実をありのままに差し出すことだけ。その先で、家族がどう向き合っていくのかは、彼らだけの時間に委ねるしかない。あの父親の、静かに落とした肩を思い出すたびに、自分はそう思うのだ。

家族の様子がおかしい、けれど本人には聞けない——そんなとき、第三者である探偵が事実を確かめることで、向き合うための糸口が見つかることがある。東京・足立区を拠点とする弊社では、家出や音信不通、素行に関するご相談も承っている。一人で抱え込む前に、まずは無料相談フォームから、お気軽にご連絡いただきたい。


よくある質問(FAQ)

Q. 家族が家に帰らず連絡も取れない場合、素行調査を依頼できますか?

A. はい、依頼できます。本人と連絡が取れず、何をしているのかわからないという状況でも、勤務先などを起点に行動を確認することで、現在の生活状況を把握できる場合があります。まずはわかっている情報をお聞かせください。

Q. 成人した子供でも、親が素行調査を依頼できますか?

A. 可能です。成人したお子さんについても、ご家族が安否や生活状況を心配されてのご依頼は数多くあります。調査の目的が正当なものであれば、お引き受けしています。まずはご事情をお聞かせください。

Q. 調査の結果は、本人に知られてしまいますか?

A. 調査は対象者に気づかれないよう、細心の注意を払って行います。尾行や張り込みも、相手に悟られないことを最優先に進めますので、調査の事実が本人に伝わる心配は基本的にありません。

Q. デリケートな内容の場合、報告の仕方に配慮してもらえますか?

A. はい、配慮します。判明した内容によっては、ご家族のどなたに、どこまでお伝えするかをご相談しながら進めます。プライバシーに深くかかわる事柄は、事実を尊重しつつ、ご依頼者のお気持ちに寄り添った形でご報告します。


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本記事は実際の調査に基づく記録ですが、依頼者および関係者のプライバシー保護のため、氏名・地名・日時など個人を特定しうる情報は伏せ、もしくは変更しています。

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