
東京 結婚詐欺調査の実録|探偵が1,200万円を取り返した、DV気質の女との攻防
結婚をエサに、合計1,200万円。会うたびに服を買わされ、駅では現金を抜き取られ、ときに平手打ちまで浴びる——。これは、ある真面目な男性が、DV気質の結婚詐欺師の女に翻弄され、最後にプロの手で全額を取り返すまでの記録である。この案件は、後にテレビ特番の取材対象にもなった。東京を拠点に30年探偵をしている自分が、TVクルーと並走しながら立ち会った、忘れがたい一件だ。
1,200万円を渡していた、真面目すぎる依頼者
その依頼者は、人の目をまともに見られないほど、気の小さい男性だった。48歳。長身だが、いつも体を縮こまらせるようにして喋る。根が真面目すぎるのだろう。そんな彼が、自称32歳の女に、結婚準備金として合計1,200万円を渡していた。
それだけではない。会うたびに服を買わされ、帰りの地下鉄の駅では、毎回のように7万、10万と現金を抜かれる。ウエディングドレス代として、さらに100万円。誰がどう聞いても、これは結婚詐欺だった。
この案件は、あるテレビ番組の取材と並行して進むことになった。我々探偵とTVクルーは、その関係の全貌を、同じ現場で目撃することになる。
30分待たされる、朝の迎え
ある日の朝9時。男性が、女の住むマンションへ迎えに行く。インターフォンを鳴らすと、返ってきたのは「ちょっと待っとけ」の一言だった。そこから、彼はマンションの前で30分近く、ただ立って待たされた。番組の都合で男性にはマイクが付いていたので、そのやり取りは我々にも鮮明に聞こえていた。
この日の予定は、ほぼ週に一度の「買い物デート」である。嫌な思いしかしないことを、彼自身わかっている。それでも迎えに行く。我々には理解しがたい関係だった。
ただ、彼が完全に騙されきった愚か者かというと、そうではない。心のどこかでは「これは結婚詐欺だ」と気づいている。そうでなければ、弊所に相談などしてこない。それでも「もしかしたら、この女と結婚できるのではないか」という一縷の望みが、頭の中で疑いと絡み合い、彼を縛りつけていた。
ようやく女が現れた。手にしたバッグを、当たり前のように男性へ押しつける。文句を言いながらも、彼はそれを持って歩き出す。我々とTVクルーは、その後を追った。
手加減のない、白昼のビンタ
50メートルも歩かないうちだった。女が、男性を平手で叩いた。一度ではない。その短い距離の間に、3度。傍目にはふざけ合っているようにも見えるが、後ろ姿で見ていても、それが手加減なしの本気のビンタだとわかった。会話まではこちらには聞こえなかったが、光景だけで十分だった。
二人は、とにかくよく歩いた。タクシーに乗ることもなく、ひたすら歩く。女はジョギングに近い軽装で、まるで男性をウォーキングに付き合わせているかのようだった。30分か40分は歩いただろうか。ようやく入ったのは、一軒のファミレスだった。
朝食バイキングを各々の皿に取り、席につく二人。我々は少し離れた席から、撮影と会話の聴取を試みた。雑踏で聞き取りにくかったが、おおよその内容はつかめた。
この日、男性には一つの任務があった。あらかじめ我々と打ち合わせ、相手から特定の言葉を引き出すことになっていたのだ。金はきちんと結婚準備金として貯めてあるのか。結婚はいつするのか。彼は、意を決して切り出した。
「積み立ての貯金、いくら貯まった?」
「だいぶんあるんじゃない」
「だいぶんって、いくら?」
「通帳見てないからわからん」
「だいたい、どれくらい?」
「うるさい!」
そこで会話は途切れた。しばらく間を置いて、彼はもう一つの問いを口にする。
「それで、結婚式はいつするの?」
女は、不敵に笑ってこう言い放った。
「お前の態度次第だな」
「態度って……」
「それ、オクレ」
そう言うと、女は男性の皿から小さなハンバーグをひょいと取って、口に運んだ。
「ハンバーグまで取るんやな」
そう言いながら、男性は、なぜか少し嬉しそうに笑った。——ここまで読んで、出来の悪いバラエティドラマのようだと思うかもしれない。だが、これらはすべて、実際に目の前で起きた光景である。
百貨店での、猫なで声
1時間ほどでファミレスを出た二人は、また歩き出した。果てしないと思うほど歩いた先に、一軒の百貨店があった。あてもなくぶらついていた二人だが、女がレディース服の店に入り、気に入った一着を「買え」とねだり始めた。
ところがこの日の男性は、珍しく粘った。「絶対に買わない」と、首を大きく横に振る。すると女は、店先まで出てきて食い下がった。普段の高圧的な態度とは打って変わり、珍しく猫なで声である。体を密着させ、男性の腕を取り、「ねぇ、お願い。結婚するんじゃん。お願いだから」と、執拗に迫る。
結局、根負けした男性は、渋々その服を買った。それから2、3軒を回り、気がつけば彼は、買い物袋を3つも4つも提げていた。女は手ぶらで、スキップでもするように軽やかに歩く。かたや男性は、自分のリュックを背負い、両手に荷物を抱え、肩を落として歩く。なお、念のため記しておくが、絵になるようにといった買い物の指示を、こちらから出したことは一切ない。我々はただ、目の前の光景に驚きながら、カメラを回していただけだった。
駅構内に響いた、怒号
日が暮れかけた頃、二人は帰りの電車に乗るべく、駅へと向かった。構内の人気の少ない一角で、何かのやり取りがあったらしい。遮蔽物が多く会話は拾えなかったが、突然、女の怒号が響き渡った。
「こっちこい!」「早く!!」
「服、引っ張るなや」「ボタン取れたやないか」
「私の親はヤ◯ザなんじゃ! お前みたいな奴、いつでもやれるんだぞ!」
「痛い! 殴るなよ!」という、男性のか細い声も聞こえた。普通に生きていれば、リアルでは一生耳にすることのない種類の怒号の応酬だった。
さすがに人目を引きすぎると気づいたのか、二人は改札へ向かう。そして券売機の前で、男性はまたしても財布を奪われ、中から7万円を抜き取られた。
「ダメだって」
「この前の8万円も、まだ返してもらってないやないか」
「うるさい! 今度返すから貸せ!」
そんなやり取りの末、二人は別れた。合流した依頼者に、我々は尋ねた。
「なぜ、最後のお金を渡したんですか? あれは渡さなくても、大丈夫だったでしょう」
彼の答えは、こうだった。
「ヤ◯ザだって言うし……」
開いた口が塞がらないとは、このことだ。だが、のちにはっきりとわかる。この男性にとっては、「結婚したい」という一縷の願いが、すべてだったのだ。長い一日に、探偵もTVクルーも疲れ果てていた。それ以上、問いを重ねることはしなかった。いや、できなかった、というのが正直なところかもしれない。依頼者は、第二ボタンが破れて伸びたポロシャツのまま、長身を丸め、改札の向こうへと消えていった。
女が、飛んだ
我々は、依頼者と別れたあとも、女の単独調査を続けた。すると、別の男二人とラブホテルへ出入りする様子が確認された。さらに別の日には、珍しく清楚なワンピースに身を包み——普段はジーンズに着古したパーカーだ——若いイケメン風の男と、高級ホテルへ消えていった。
そして、ある日。女のマンションの部屋の前に、引越センターのロゴ入り段ボールが置かれているのを、探偵が見つけた。
来るべきものが来た、と直感した。これだけ厚かましく、半ば強奪のように金を貪る人間が、それを長く続けられるはずがない。本人も、潮時を感じていたはずだ。勝負は一両日。我々は朝8時からマンション前に張りついた。
やがて、2トントラックがマンション前に停車し、作業員が部屋へ入っていく。「来たな」。荷物は驚くほど少なかった。段ボール5つに、ばらしたテーブルとベッド、クッションのようなものだけ。トラックを追うと、たどり着いた先は、埼玉・所沢の戸建てだった。出てきた女を見るに、おそらく実家だろう。
ほどなく、依頼者のLINEに一言だけ届いた。
「バイバイ」
その後、返信に既読が付くことはなかった。
ここが、この調査の最大のターニングポイントだった。なにしろ依頼者は、女の本名すら確かには知らない。知っているのは、まともには見える氏名、前のマンションの住所だけ。友人も、勤め先も、何ひとつ把握していない。このまま飛ばれれば、すべてが闇に消える。だからこそ我々は、この引っ越しに執念で食らいついたのだ。
Xday、そして決着
所沢の実家から、女の追跡を続けた。両親らしき人々と食事に出かけ、父親らしき男性の車で駅まで送られ、東京へ出ると、結婚相談所に入っていった。紹介されたのだろう、真面目そうな男性とホテルのレストランで食事をする。東京にいた頃とはまるで別人のような出で立ちで、同一人物かと我々が戸惑うほどだった。次の獲物を、すでに探し始めていたのだ。実家ではほとんど外に出ず、やがて近所の百貨店内のドラッグストアに勤め始めた。
ここまで素性を固めた段階で、テレビの制作陣と「Xday」の打ち合わせに入った。Xdayとは、探偵、弁護士、タレント、TVクルーが一斉に対象者を囲み、会議室で対峙する日のことだ。これは、7、8年前に特番として放送された「ハンゲキ」という番組での出来事である。
「女の仕事終わりを狙い、弁護士と探偵が先陣を切って突撃した。男性に使っていた偽名を呼んでも無視されたが、実家で調べた本名を呼ぶと、観念したのか振り向いた。そこで『会議室まで来てほしい』と求めた。半ば強制ではあったが、相手が渋っても、その場で話し合うだけのことだ。会議室に入ると、現場を担当した探偵2名、弁護士2名、タレント1名、そして被害男性が居並ぶ。その正面に、女がただ一人、パイプ椅子に座っている。背後にはTVクルーが10名ほど、カメラを回し、マイクを構えている。」
逃げ場のない構図の中で、追及が始まった。
結論から言えば——女は、すべてを認めた。そして1週間後、弁護士事務所に、1,200万円が振り込まれた。全額である。
あれだけ人を翻弄し、嘲笑い、奪い続けた女も、逃げ道を完全に断たれた瞬間、もろくも崩れた。あの真面目な男性が取り戻したのは、1,200万円という金だけではない。踏みにじられた誇りの、ささやかな取り返しでもあったと、自分は思っている。
この事件が教えてくれること
結婚詐欺の被害者は、けっして愚かな人ばかりではない。むしろ真面目で、人を疑うことが苦手な人ほど、相手を信じたい一心で深みにはまっていく。「これはおかしい」と頭ではわかっていても、感情がそれを認めたがらない。だからこそ、第三者の冷静な目で事実を確認することが、抜け出すための第一歩になる。
また今回の最大の難所は、相手の素性がほとんどわからないまま「飛ばれかけた」点にあった。結婚詐欺では、相手の本名も勤務先も不確かなことが多く、逃げられてからでは手遅れになりかねない。少しでも不審を感じたら、被害が大きくなる前にご相談いただきたい。東京・足立区を拠点とする弊社では、初回のご相談を無料で承っている。まずは無料相談フォームから、お気軽にご連絡いただきたい。
よくある質問(FAQ)
Q. 結婚詐欺かもしれないと思ったら、調査を依頼できますか?
A. はい、依頼できます。相手の素行や身元を調べることで、結婚を口実に金銭を引き出していないか、他に交際相手がいないかなどを確認できます。確証がない段階でも、不安を感じた時点でご相談いただくのが望ましいです。
Q. 相手の本名や勤務先がわからなくても、調査できますか?
A. 対応できる場合があります。今回のように呼び名と住所しかわからないケースでも、行動調査の過程で本名や勤務先、実家などを特定できることがあります。わかっている範囲の情報をお聞かせいただければ、そこから調査を組み立てます。
Q. 結婚詐欺で渡したお金は、取り戻せますか?
A. 状況によっては取り戻せる可能性があります。詐欺の事実を裏づける証拠を確保し、弁護士を通じて返還を求める流れが一般的です。確実に全額が戻ると保証するものではありませんが、証拠の有無が結果を大きく左右します。
Q. 相手から脅されていて怖いのですが、それでも相談できますか?
A. もちろんです。脅しや暴力を伴うケースこそ、一人で抱え込まず専門家に相談すべきです。状況に応じて弁護士とも連携し、安全に配慮しながら対応を進めます。まずは無料相談でお話をお聞かせください。
結婚詐欺・浮気調査のご相談は、足立区の青木ちなつ探偵調査へ
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※本記事は実際の調査に基づく記録ですが、依頼者および関係者のプライバシー保護のため、氏名・地名・日時など個人を特定しうる情報は伏せ、もしくは変更しています。



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