
浮気調査ストーリー|終電を3本見送る夫と、雨の夜の決定的瞬間
用心深い対象者ほど、探偵の腕が試される。振り返り、電車を見送り、遠回りをする——そんな夫を追い詰めたのは、雨の夜だった。これは、実際の調査経験をもとに構成した、ひとつの物語である。
残業ゼロの、残業
依頼者は、40代の主婦だった。夫は都内の会社に勤める、ごく普通の会社員。ここ半年、夫の帰りが目に見えて遅くなった。週に2度、3度。「残業だ」と夫は言う。疑うことを知らない妻は、半年ものあいだ、それを信じていた。だが、ある日。妻は偶然、夫の机に置き忘れられた給与明細を目にしてしまった。残業時間の欄には、はっきりと「0時間」と印字されていた。
「残業のない残業って、何なんでしょうね」
事務所でそう言った依頼者の声は、怒りよりも、疲れの色が濃かった。小学生の娘が一人いる。夫は家では良き父親で、休日には娘と公園へ行く。だからこそ、余計にわからない。あの人は、何をしているのか。こうして夫の浮気調査が始まった。
振り返る男
初日の尾行で、すぐにわかった。この対象者は、用心深い。
会社を出た夫は、駅へ向かう途中、二度、立ち止まって振り返った。ショーウィンドウの前で足を止め、ガラス越しに背後を確かめる。ホームでは、来た電車を1本、2本と見送る。周囲の顔ぶれが入れ替わるのを待っているのだ。異常だ、素人の動きではない。おそらく、過去に何かで懲りた経験があるのだろう。
こういう相手に、1人や2人で張り付くのは危険だ。同じ顔を2度見せれば、警戒される。我々は3名で組み、リレー式の尾行に切り替えた。1人が改札まで追えば、ホームでは別の探偵が引き継ぐ。車内では3人目の探偵が、離れた車両から目だけで追う。対象者の視界に、同じ人間を長く置かない。地味だが、これが鉄則である。
初日、夫はただ書店に寄り道をして帰っただけだった。2日目も、空振り。まっすぐ家路につく夫の背中は、どこにでもいる勤め人のそれである。だが、我々は焦らない。これだけ用心深い人間が、意味もなく用心深いはずがないのだ。警戒するのは、隠すものがあるからである。3日目の夕方、LINEが入った。依頼者からだった。
「今日、主人が『遅くなる』と連絡してきました」
外は、朝から冷たい雨が降っていた。
雨の夜の攻防
雨の日の尾行は、難しくもあり、やりやすくもある。傘で対象者の視界が狭まるぶん、こちらは近づける。だが同時に、こちらも相手を見失いやすい。無数の傘の波の中で、対象者の紺色の傘だけを、目の端で追い続ける。
夫はその夜も慎重だった。駅を出ると、わざと細い路地に入る。角を曲がった直後に立ち止まり、ついてくる者がいないか確かめる。我々は無線でつなぎながら、先回りと後追いを交互に繰り返した。相手の行き先を読み、先に角の向こうで待つ。探偵の尾行とは、後ろを歩くことではない。相手の頭の中を歩くことだ。
やがて夫は、繁華街の外れにある小さな小料理屋に入った。探偵たちは3カ所に散り、店の出入口が見える位置にそれぞれ体を収める。1人の探偵は向かいの喫茶店の窓際、1人は斜向かいの軒下、他の探偵は少し離れた駐車場の車の中と外。雨音が、街のざわめきを消していく。15分後、一本の赤い傘が、雨の路地の向こうから現れ、同じ店の暖簾をくぐった。傘の主は、30代半ばの女性だった。店の扉が開いた一瞬、夫が立ち上がって女性を迎える姿が見えた。その笑顔は、依頼者から預かった家族写真の中の顔と、同じ人物のものとは思えなかった。
2時間後、2人は店を出た。ひとつの傘に、2人で入っていた。夫の腕に、女性の手が絡む。2人が向かった先は、路地の奥のホテルだった。入口の手前で、夫が最後にもう一度、あたりを見回す。——だが、遅い。探偵たちはすでに、通りの向かいのコンビニの中にいた。窓越しに、雨に濡れたガラスの向こうで、2人がホテルへ消えていく一部始終を、カメラは静かに収めていた。
1週間後、2度目の逢瀬(隠れて会う)も同じ場所で確認した。言い逃れのできない証拠が、そろった。
報告書の、その後
報告書を渡した日、依頼者は取り乱さなかった。1枚、1枚、ゆっくりとページをめくっていく。その手が、写真のページで1度だけ止まった。ひとつの傘に入る、2人の姿。その写真だった。長いあいだ、じっと見つめたあと、依頼者は静かに報告書を閉じ、「ありがとうございました」とだけ言った。その声の落ち着きが、かえって胸に刺さった。
後日、依頼者から電話があった。あの晩、報告書を居間のテーブルに置いて、何も言わずに夫の帰りを待ったのだという。帰宅した夫は、いつものように「ただいま」と言いながら居間に入り、テーブルの上のそれに気づいた。表紙には、何も書かれていない。怪訝な顔でページをめくった夫の顔から、みるみる血の気が引いていったという。あの雨の夜の、ひとつの傘の写真。ホテルの入口で、最後にあたりを見回す自分の姿。あれほど確かめたはずの背後から、すべてを見られていたのだ。夫は、そのまま、その場に崩れ落ちた。言い訳の言葉は、ひとつも出てこなかった。ただ、娘の寝ている部屋のほうを一度だけ見て、声を殺して泣いているようにも見えたという。あの用心深い男が最後に流した涙は、妻に対してのものだったのか、それとも、失うと悟った日常に対してのものだったのか。それは、誰にもわからない。
あれほど用心深く、振り返り、電車を見送り、路地で立ち止まっていた男の最後が、これである。どれだけ周到に隠しても、事実はいつか、一冊の報告書になって食卓に載る。守るべきものの重さに気づくのは、たいてい、すべてが写真に収められたあとなのだ。
夫婦がその後どうなったのか、我々は知らない。一般的にはそこから弁護士の紹介となるのだが、依頼者からの連絡は、それきり途絶えた。ただ、あの静かな依頼者が、娘のためにも最善の道を選んだであろうことを、祈るばかりである。
この物語について
※今回のお話しは事実を基に書きましたが、少し小説風にしましたので微細な部分に筆者の想像が混じっております。そして、依頼者の個人情報保護の観点からこの文章から本人特定は絶対に出来ないように仕上げました。
東京・足立区を拠点とする弊社では、初回のご相談を無料で承っています。まずは無料相談フォームから、お気軽にご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 相手が警戒心の強い人でも、尾行はできますか?
A. できます。振り返りや電車の見送りなど警戒行動をとる相手には、複数名で交代しながら追う方法や、行き先を読んで先回りする方法を組み合わせます。相手の警戒が強いほど慎重に進めるため時間はかかりますが、経験のある探偵であれば対応できます。
Q. 雨の日でも浮気調査はできますか?
A. できます。雨の日は撮影条件こそ厳しくなりますが、傘で相手の視界が狭まるため、かえって尾行しやすい面もあります。天候に合わせて機材や調査方法を調整しますので、ご安心ください。
Q. 「残業」と言って帰りが遅いだけで、調査を依頼してもいいのでしょうか?
A. はい、問題ありません。給与明細と実際の帰宅時間が合わないなど、小さな違和感からのご相談は数多くあります。確証がない段階でも、状況を伺ったうえで調査が必要かどうかを含めてご提案します。
Q. 証拠の写真は、どんな場面を押さえれば有効ですか?
A. 異性と二人でホテルへ出入りする場面が、不貞を示すもっとも有力な証拠になります。一度だけでなく複数回の出入りを押さえることで、証拠としての価値がさらに高まります。
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