
探偵による浮気調査 実例①
今回の調査は、梅雨明けが宣言された途端に気温が30℃近くになる嫌な暑さの時期。東京 池袋で倉庫委託業を営む会社の常務の妻からの依頼。出張という名目で北海道の取引先に挨拶を兼ねた食事の接待という体裁。
以前から、浮気を疑っていた依頼者である妻は、たまたまインターネットでツアー予約した後、旅行会社の返信メールを見て不審が確信に変わった。(パソコンのメールと夫のスマホに入っている会社のメールは同期されている)
その返信メールにはご丁寧に一緒に行く人達のフルネームから、往復の飛行機の便名から時間まで、こと細かく記載されていた。
そこには夫が常務を務める会社の社長と、他に女性の名前が二人前。夫の会社の社長は夫の同級生。つまり、社長は二代目社長の、いわばボンボン社長で夫の悪友。
つまり、今回のこの不倫旅行も悪友社長と一緒ということは会社の経費で落とす算段なんのだろう。申込者氏名の前にシッカリと、会社の名前が書いてある。
しかし、女性の名前は聞いたこが無い。
――どこかのキャバクラの女・・・?
その程度しか、思い浮かばない。社内の女性では無いことは確か。一応、社員名簿のコピーは家にあるので、照合してみたが一致する名前は無い。
この情報を見た時には、探偵に依頼することは既に決めていたので、探偵事務所をスマホで検索し「ど・こ・に・し・よ・う・か・な・・」と探す。色んな浮気調査の実例が書いてあったものに目を通して行くと、『青木ちなつ探偵事務所』というところが妙に具体的で説得力があったので、早速電話でアポを取り池袋のサンシャインにある探偵事務所に出向いて契約をした。
私は結構、楽観的で今回のこの不倫旅行も夫にお灸をすえるつもりだった。言い逃れや嘘でウヤムヤにされるのが嫌だったので依頼することを決意して。だから、料金も安いし担当の探偵さん兼相談員さんの感じもよかったし、ホームページに書いてあることになんの違いもなかったので、躊躇なく依頼した。
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調査当日の朝6:30に調査員3名は予め、飛行機往復切符を持って一階が駐車場になった会社に車が出入り出来る二ヶ所が同時に見える場所に陣取った。
事前に千歳空港付近のレンタカー屋に事務員が、「白かグレーのセダン」という条件の車を探し予約していた。2日借りて6,000円。東京と比較しても驚くほど安い。
今回の調査で一番の難所であるのが、このレンタカーを借りるタイムラグ。調査対象者達も当然レンタカーを手配していると想像する。
依頼者である妻の話では「夫や社長はお金を持っているのでタクシーを使うことも十分考えられる」と、言っていたが、千歳空港から札幌の市街地までは車で1時間少々かかる。ましてや4人、そこへ地方のタクシーは小型車が多い。あとツアーのパックにレンタカーも含まれていることも有るので、空港からのタクシー移動は考え難い。
もしも、ホントにタクシーに乗れば、1人の探偵がタクシー尾行をしている間に残った2人の探偵がレンタカーを借りて追いかけて合流すれば問題は無い。一番難しいのが不倫チームのレンタカー屋がスムーズで、こっちのレンタカー屋がモタモタされること。
しかし、最悪は不倫チームの予約しているレンタカー屋が空港まで先に迎えに来たら、それを1人の探偵がタクシーで追い。その間に探偵チームがレンタカーを素早く借りればどうにかなる。
この様に最悪の場面を想定しながら段取りを組むのも探偵ならではの発想である。
話を現場に戻そう。
思ったよりスムーズに来れたので、少し時間は早めだったが会社の出入り口や駐車場の形状などを綿密に確認出来た。これで、万全。
今回の調査にあたる探偵班は、この道12年の33歳。まだまだ若いが探偵の腕前は業界屈指のS級探偵。梅島(仮名)もう1人は27歳で、探偵歴2年程ではあるが、超ハイセンスな将来を嘱望される若手探偵。中村(仮名)後ひとりはお馴染みの青木ちなつ探偵事務所の取締役である青木(本名)北海道の調査と聞いて有無も言わさず参加。ある意味職権乱用にも近い・・。しかし、この3名が揃えば鉄壁の布陣。
情報が豊富に有る為然程、気負う事の無い調査ではあるが、探偵の浮気調査だけは何が起こるか分からない為、気負わずとも気は抜かないことを、この探偵達は十分に理解している。
そうこうしているうちに、本件調査の主目的である依頼者の夫が黒塗りの新車のベンツで会社の駐車場に入って来るのを確認。梅島と中村は、既にビデオを回している。抜かりはない。
その後直ぐに白色のハイエースが入ってきた。情報には無い車。しかし、車を駐車場に停めてから会社の二階に上がる階段が見えるので、それを視認すると、それはあらかじめ依頼者から提供されていた、社長の写真とほぼ同一人物。というか、間違いなく社長。
「うん・・社長の車が違うな・・」と青木がいう。S級ベテラン探偵 梅島が「ですね」と返す。
早速、情報と違う状況だがそんなことには一切動じない探偵達。これくらいの違いは日常茶飯であることは分かっている。
それから20分ほどして、白いハイエースに続いて調査対象者の黒塗りの高級ベンツが出て来て、前後に並んで走り出した。
調査車両を運転しているのは若手のホープ探偵、中村は暗黙の了解でその後をゆっくりと追う。
すると500mほど走ったところで、前を走っていた白いハイエースが左折したがベンツはそのまま真っ直ぐ進む。運転手の中村は慌てる様子もなく
「どっちを追いますか?」
「ん・・。空港方面は真っ直ぐやからベンツについていこ」と青木がいう。勿論、それには誰も異論はなくそのまま、ベンツを追う。
しばらく走っていると空港へ行くなら高速に乗るはずなのにベンツは下道を走り続ける。「これどこに行くつもりやろ」青木がひとり言の様に言う。
そのまま、15分ばかり走った後、ようやくベンツは首都高に乗った。その間どこかに寄ることも無く、高速代が変わるわけでも無いのに・・。「なぜ??」しかし、そんなことに別段 意識を向ける必要も意味も無い。車両尾行が少しでもバレている気配が有れば、緊張が走る場面だが。バレる様な下手な尾行を中村は一切していなかった。
こちらの想像通りに調査対象者全てが動いてくれるのならば、探偵なんて誰でも出来る。想定外の動きに対して、どう合わせるのがお金を頂いて、依頼される探偵の役割。そんなことも熟練の探偵だからこそ普通に対処出来るのだ。これが、以前のこのブログに出ていたポンコツ探偵『茂』が同乗していたなら、この状況だけで3人の探偵をイラつかせるに十分な言葉の3~4つは出ていただろうが・・。
その後は空港までの道のりを少々荒っぽい運転で走るベンツ。搭乗時間まではまだまだ時間があるし、ムリして追う必要も無いので、そこは付かず離れず絶妙な距離感で尾行する若手探偵中村。
その後無事、羽田空港第二ターミナル駐車場にベンツが入って行くのを確認しその4~5台後から調査車両が駐車場入口に入ろうとすると、対面の駐車場出口からベンツが出て来てちょうど真横の位置関係になった。
「同じ色のベンツでも、違うベンツ?」と一瞬思ったが、運転席の顔を見ると間違い無く調査対象者である会社の常務。すなわち依頼者の夫。
「ん・・なんじゃ・・」こっちの中村探偵が運転する調査車両は入口のゲートに入ってしまったが、相手車両は出口から外へ出てしまう。このままでは、かなりのタイムラグが出て見失うのは必至。
別に車を見失っても、搭乗口で待って居ればいいのだが、ただ 帰りに浮気相手を送って行くだろうと想像しているので、明日の浮気相手の女性の身元特定をするのに、調査対象者の駐車移置の近くに停めて置きたい。それと、急遽別便に予約変更をした可能性もゼロでは無い。
早くも本件調査での焦りが、探偵達を乗せた車内を支配する。
続きは
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