教えて探偵さん。浮気相手が複数の場合

教えて探偵さん。浮気相手が複数の場合にはどうすればいいの?

先日、ご相談に見えた依頼者さんからの質問です。

 

これは決して珍しいパターンじゃ有りません。

 

過去には、4度ご主人の仕事帰りを尾行した際、なんと4人とも違う女性と浮気をしていたことが判明し、我々探偵も少々驚きました。

 

他には、2回尾行して2人の女性とそう云った不倫関係を突き止めることは多々御座います。

 

 

でも、こう云ったケースもあるにはあるのですが、基本1人の女性との逢瀬が大多数です。

 

で、複数人の女性と浮気している場合どうすれば良いのか?答えは簡単です。2人共証拠を撮って慰謝料請求をすれば良いだけです。難しく考える必要は有りません。浮気や不倫をしていればその証拠を撮ることは非常に単純な作業です。

 

敢えて、デメリットとを言うならば、それだけ調査日数や時間がかかるので、依頼者さんのお財布にご負担が少しかかることですが、同業他社さんは分かりませんが弊所の様に適正料金で運営しているところならば、

 

契約時の交渉で別個に調査するよりも、随分と合理的な料金設定でお引き受け出来るかと思います。

 

実際、冒頭に書いた依頼者さんの場合も合計2日で全て終わりましたので、双方の不倫相手に慰謝料請求をし示談が成立。慰謝料も2人から頂き、現在は ご主人も猛省されて。

 

「スマホにGPSのアプリを付けても構わないからもう一度なんとかやりなおさせてはもらえないか」

 

亭主関白だった夫婦関係が現在ではすっかりと逆転し、依頼者である奥さんは

 

「これからの態度をみてから考えるわ」

 

と、雨降って地固まることわざ通りの毎日を過ごされていると連絡がありました。

 

 

この調査の模様を実録で書いてみます。

 

 

ご相談に来られたのがまだまだコートの必要な、ある3月末頃。ご主人のLINEを奥さんが見放題で、ご主人の浮気の日時や内容は手に取る様に分かるとのこと。

 

 

こう云った場合は我々探偵も、ご依頼者様もお互いが結構、楽チンな調査になるので有り難い限り。

 

しかし、その日程が分かっていても調査直前で、その日は会わない。と、いったことがたまたま続き、結果 そのままズルズルと、1度目の調査が契約からそろそろ暑くなりかけていた6月某日に決まった。

 

調査実行日はご主人の仕事が休みの土曜日。休日出勤をするとご主人は言っているが、LINEにはしっかりと待ち合わせ場所まで書いてある。

 

調査実行日の朝早く、依頼者さんから確認のLINEがあり。

 

「今回は必ず行きますので宜しくお願い致します。」とのこと。

 

朝から待機していた探偵達にすぐさま連絡し、「今日は行くらしいから、朝6:00スタート」と連絡を入れると、弊所のS級探偵2名と少々頼り無い、新人研修生が運転手として本件調査に出動した。

 

 

S級探偵2名が尾行すれば何等 問題は無いし、運転手はその探偵達から来る連絡に応じて調査対象者である、ご主人の行く先々、その場所に来てもらうだけで、ある意味 事故を起こさない程度に運転が出来ればそれでOK。

 

 

それは、今回の調査対象者はタクシーも使わない、全て電車移動との情報だったので、新人に現場経験を踏ますための起用。

 

 

浮気相手との待ち合わせは11時に東京駅とのこと。そこまでの情報があれば、探偵も結構 楽なのだが。全てがその通りに動くと思っていると大きなミスにつながるので、緊張感は絶対に緩めない。情報はあくまでも情報であって、人間はアドリブで動くことが多い、変更があることはある意味自然なこと。

 

 

調査対象者の住まいは、東京足立区の住宅街。調査対象者は東京足立区でも有名な 大踏切のある、東武線竹ノ塚駅までは自転車。調査対象者宅のドアがギリギリ見えるところに陣取り。トランクから自転車を出して、探偵達の張り込みが始まった。

 

 

6:30に出て来るとの情報。まぁ、その情報通り見事に6:30キッチリに出て来たご主人。

 

 

しかし、自転車には乗らず竹ノ塚駅とは反対方向で、調査車両を停めてある方向へ向かって来る。運転手の探偵にベテラン探偵が、

 

「リクライニングを倒せ!」

 

と、とっさに指示するが、新人探偵はリクライニングを倒すのにも時間がかかる・・・。すると、ご主人は直ぐに左に曲がり自転車に乗っていた探偵から、インカムで「ゴミを出して自宅の方に戻りました」と通電。

 

 

自宅前に戻ったご主人は、自転車に乗って再び出て来た。自転車に乗った探偵がゆっくりと後を追う。調査車両もゆっくりとその後を追うが、ベテラン探偵が「駅に先回りします」と自転車探偵にインカムで連絡。自転車で追っている探偵から

 

「ブチッ・ブチッ」と2回 了解の合図が入る。

 

「きみさぁ・・今、聞こえてたでしょ?竹ノ塚駅へ先回りって」

 

新人運転手探偵は、その遣り取りを自分のインカムでも、肉声でも後部座席に乗っているベテラン探偵の声が聞こえているはずなのに、まだ調査対象者を追い越そうとしない・・。

 

新人運転手探偵「あ、ハイ!駅へ行けばいいんですね!」

 

ベテラン探偵は少々苛立ちぎみで「そう!」

 

新人運転手探偵「この突き当りどっちですか?」

 

ベテラン探偵 「左でしょ、竹ノ塚駅知らないの?」

 

新人運転手探偵「いえ、知ってますけど念のために」

 

ベテラン探偵 「・・・・・」

 

そんなこんなで、調査車両は竹ノ塚駅に2分程で着き。新人運転手探偵に

 

「対象が駅に着いたら連絡するから自転車を回収して、そのまま東京駅に向かって」

 

その後すぐに、自転車探偵の声がインカムに入って来た。

 

「対象自転車置き場自転車を置いて、ロータリーの漫画喫茶に入りました」

 

ベテラン探偵は、「了解」と返事をしてロータリー側に向かった。そしてその後、運転手探偵からの返事が無いので、

 

「茂くん聞こえてる?」(新人運転手探偵の名前)と聞くと返事が無い。もう一度同じことを言っても返事が無い。仕方無いので、携帯に電話するが出ない。

 

取り敢えず、その場は放って置いて。ロータリー横の漫画喫茶というかネットカフェ前で自転車探偵と合流。

 

「茂くんは?」と、聞く

 

その時、自転車探偵の携帯が鳴った。ディスプレーには「茂くん」と表示され出てみると。

 

「あの~自転車どこに置きました?」

 

自転車探偵「ん・・。ロータリー側の駐輪場のとこだから・・。取り敢えずロータリー側にきてくれます?」

 

自転車探偵は、駐輪場近くに置いた自転車を自分で取りに行き、漫画喫茶の横まで乗ってきたら。調査車両が駐輪場のところに停車し、降りて近くを探している様子が見て取れたので、新人運転手探偵の携帯に電話するも、電話に出ない。

 

仕方が無いので、自転車探偵がまた、自転車に乗って。新人運転手探偵、茂のいる場所まで行って一緒に自転車を調査車両のトランクに閉まってあげた。

 

「電話したのになんで出ないの?インカムは?」と聞くと。

 

「スミマセン。携帯は車の中でインカムは・・・。あ、耳から外れてました」

 

自転車で追っていたこの時の自転車探偵と記していた。S級探偵が優しく

 

「あのね、チームで仕事しているんだからさ、その連絡ツールを2つとも使えなきゃ意味無いからね」

 

新人運転手探偵「ハイ!スミマセン」と笑顔で答えた。

 

―― この子はどうなることやら・・。

 

そして、朝9時少し前に漫画喫茶からご主人が出て来た。その漫画喫茶の出入り口の一番見晴らしの良いコインパーキングに調査車両を停め探偵3名が乗っていた。

 

 

ベテランS級探偵は、休日出勤だと嘘を吐いているご主人がこの漫画喫茶で時間潰しをしていると思っていたので、ひとつしかない出入り口からご主人が出て来たら、調査車両と反対の竹ノ塚駅へ向かうはずなので、調査車両には目もくれないと、たかを括っていた。ましてやコインパーキング。

 

ところが、ご主人が出て来た時、助手席に座っていた新人探偵の方をチラッと見た。

 

しかし、顔を確認出来る程の時間ではなかったので、ベテラン探偵が新人探偵に念の為1駅だけ、茂くんが一番前で、オレ達の壁になってくれ」

 

と、愚かな判断をしてしまったのだ。

 

 

俄然、やる気を出した新人探偵が「ハイ!」と返事をしたと同時に車から飛び降りドアを「バン!」と、大きな音を立てて飛び出し走り出してしまった。

 

その瞬間。ご主人がもう一度、振り返ったことを残った2人のベテラン探偵は見逃さなかった。そして、新人探偵のインカムは耳から外れていることも、確認出来た。

 

それに続いて、ゆっくりと調査車両から手際よく降りたベテランS級探偵2人がその後を追う。東京駅での待ち合わせだと分かっていたので、気持ちは少し楽だったが・・・。

 

なんと・・・。竹ノ塚駅から東京駅へ向かうのは当然、上り。ところがご主人は下りのホームから、東武スカイツリーライン「東武動物公園行き」に乗車。変な予感にさいなまれながら、新人探偵とS級探偵が同じ車両に乗り込み、S級探偵は若干の距離を取って、空いていた電車の椅子に腰かけ、スマホを見る振りをした。

 

すると・・。新人探偵 茂ちゃんは、なんとご主人の前に立ちご主人をガン見しているではないか。

 

生きた心地のしないS級探偵達。しかしほどなくして次駅の草加駅でご主人が下車。新人探偵がその真後ろ1mほどを付いて行く。

 

同じ車両に乗っていたS級探偵が思わず。「もういいから竹ノ塚に戻って指示を待って」と耳打ちをし、そのまま上りホームへ行かせた。

 

 

同じS級探偵が、隣の車両に乗っていたベテランS級探偵にインカムでご主人は草加の改札を抜けましたので、追いますが「間違い無くバレていますので、ムリはしない方向でいいですか?」

 

と、ベテラン探偵に許可を求めた。「分かってるムリはしないで、少しでも目があったら今日は一旦引き上げよう。オレの判断ミスだよ、いずれにせよもう一度この駅にご主人は戻って来るはず。オレは構内で待機するから」

 

そう打ち合わせをした、その5分後キョロキョロしながら草加駅周辺を周回していたご主人が草加駅へ戻っているとインカムで知らせが入った。「オレも2回程見られています」と、尾行していたS級探偵がいう。

 

 

「分かった後はオレに任せて」と駅に残っていた方の探偵が言った。そして、「おそらく、草加まで来たから待ち合わせに焦っているだろう。、西新井で準急にのり変えると思うから、1本後の電車で後から来て」といい。尾行していたS級探偵は「分かりました」返事をし、指示に従った。

 

 

想像通り、西新井駅で一旦ご主人が降りたと、LINEが入った。その後、「茂くん東京駅に向かって」とLINEを入れると「了解です」と、返信があった。いらだちを隠せないS級探偵達は「何が了解ですじゃ・・」とLINEの返信にさえ腹が立って来た。

 

 

そして、西新井駅に準急よりも先に各停が先に到着し、そこから1本遅れで来た探偵が降りたのが目に入ったので「お疲れさん、対象とは距離を取って横の車両にでも乗っていて」とインカムから通電された。お決まり通りに「ブツッ!ブツッ!」とインカムの了解の合図が戻って来た。

 

 

その直後、準急が上りホームに入って来て、ご主人と探偵達が乗り込む。まだ、少々新人探偵 茂ちゃんを探している様子のご主人も北千住で乗り換え上野を下車しJR山の手線、東京行きに乗り込んだ時には、座席に座ってスマホを取り出し警戒心は随分薄れたように見て取れた。

 

東京駅に着き、丸の内側のショッピングモールの小さな「東京バナナ」の店舗の前でご主人が立ち止まり、スマホを出して操作し始めた。

 

「東京バナナって・・。」なんとベタな場所で待ち合わせ?

 

この位置は、東京駅丸の内ショッピングモールは、広いので対象を見張るには絶好の場所。2人のS級探偵が角度を変えた場所から、ご主人の動きを細かに見ている。しかし、このご主人、電話をし出してからウロウロとあっちへこっちへと歩きながら話している。

 

その程度のことは探偵にとっては、さして問題では無く人混みも多く2人の探偵はなんなく尾行する。

 

その時、新人探偵『茂くん』からインカムで

 

「東京駅に着きました!」と通電。

 

「丸の内側に来て、対象とオレ達は構内にいるから」

 

「丸の内側ってどこですか?」

 

少々イラついたS級探偵は「その辺の人に聞けばわかる」

 

「その辺の人って、通行人ですか?」

 

「誰でもいいから聞けよ!」

 

いよいよ、辛抱の限界で、S級探偵も声を荒げた。それにも関わらず、茂くんは

 

「ハイ!分かりました!」

 

と、何等気にしていない返答。

 

それから20分近く経って・・・。

東京駅に着き、丸の内側のショッピングモールの小さな「東京バナナ」の店舗の前でご主人が立ち止まり、スマホを出して操作し始めた。

 

この位置、東京駅丸の内ショッピングモールは、広いので対象を見張るには絶好の場所。2人のS級探偵が角度を変えた場所から、ご主人の動きを細かに見ている。しかし、このご主人、電話をし出してからウロウロとあっちへこっちへと歩きながら話している。

 

その程度のことは探偵にとっては、さして問題では無く人混みも多く2人の探偵はなんなく尾行する。

 

その時、新人探偵『茂くん』からインカムで

 

「東京駅に着きました!」と通電。

 

「丸の内側に来て、対象とオレ達は構内にいるから」

 

「丸の内側ってどこですか?」

 

少々イラついたS級探偵は「その辺の人に聞けばわかる」

 

「その辺の人って、通行人ですか?」

 

「誰でもいいから聞けよ!」

 

いよいよ、辛抱の限界で、S級探偵も声を荒げた。それにも関わらず、茂くんは

 

「ハイ!分かりました!」

 

と、何等気にしていない返答。

 

それから20分近く経って・・・。

———————————–

 

相変わらず、対象であるご主人は電話しながら、そっちこっちをウロウロしている。

 

 

その時 笑顔でこっちに向かってくる、茂くんの姿を確認した。1人の探偵が慌てて、茂くんの元へ駆け寄り

 

「車はどこに停めた!」

 

「タクシー乗り場のとこです!」

 

「駐禁切られるからすぐに車に戻って!それと茂くんは対象に見つかってるんだからこっちへ来ないでいいから!」そう言うと。茂くんは

 

「分かりました、おなかが減ったから何か食べてもいいですか」

 

「ハイハイ、何か買って車の中ででも食べといて、車はタクシー乗り場のとこやね」

 

「ハイ!そうです」

 

「ふぅ・・・」とため息をついてようやく対象に気付かれることも無く、なんとか茂くんを戻した。

 

それから、15分程して、東京バナナの前で、ようやくご主人は女性と接触。お世辞にも綺麗とは言えない40半ばくらいの女性。

 

そして、2人は駅を出てタクシーに乗る雰囲気満載。直ぐに茂くんにインカムで「茂くんこっちへ回って」と言っても返答が無いので、茂くんの携帯に電話するも、話し中。

 

仕方無いので、車へ猛ダッシュし笑いながらおにぎりを食べて電話している運転席のドアをおもむろに開けて

 

「どけ!」と言って、運転を変わったS級探偵。そのまま、タクシーを尾行しようにもご主人と接触女性が乗ったであろうタクシーの分別がつかない。

 

とにかく、猛スピードで3台の信号待ちのタクシーの乗客を見るも居ない・・・。

 

その時、運転している探偵の携帯が鳴った。もう1人のS級探偵からだった。

 

「今、台東区の方に向かっています、もしホテルならば湯島あたりかと」

 

「了解、そのまま追って下さい。オレも直ぐに後を追うから」

 

もう1人の探偵が、何かあってはまずいと思い先にタクシーに乗って、対象両名を追っていた。

 

すぐに間は詰まり、

 

「そのタクシーのナンバーは何番?」と電話で聞く。

 

タクシーの運転手に聞いて即座に答える。「対象のタクシーのプレートは」

 

「オレンジのタクシーで31-51です」

 

直ぐに探偵の乗ったタクシーは見えた。

 

「今、後ろに着いたから折りのいいところでこっちに乗って」といい、二つ目の信号でタクシーを降り調査車両の後部座席に探偵が乗り込んだ。ここから、実質的な車両尾行の始まり。その緊張の中、茂くんが、

 

「もうちょっとで駐禁切られるとこでした」

と、笑いながら話す。

「あの緑の服着たオッサンが2人なんか車の周りをウロウロしてたんで、おーい今、動かすから待った!って言って追い返してやりましたよ」

 

車両尾行中の2人の探偵はその言葉にいらだってはいたものの、終始シカト。

 

 

※注釈

一般の車両を尾行するよりも、タクシー尾行の方がいくぶん楽。ましてや東京の日中で、車の量が凄い。何故タクシーを尾行することが楽だというと、基本タクシーに乗った客は後ろを気にしない。

 

 

仮に、運転手が、変だなって思っても滅多なことが無い限り客に「何か車が付いてきてますよ」なんて言わない。そんなことを言って間違いならば客は「なに言ってるの?」ってなるでしょうから。

 

また、こっちは尾行のスペシャリスト。そう簡単に気付かれる様な尾行はしない。

 

 

そうこうしているうちに、ヤハリ湯島のラブホテル街にタクシーは進む。そして、いよいよラブホテルの駐車場にタクシーが入って行く。そのまま30秒ほど待って、調査車両もホテルの中に入って行った。これはタクシーから降りるところを撮影したいから、タクシーの料金を払い終わって降りるところ押さえる為だ。

 

運転はもう、新人探偵 茂じゃなくS級探偵。そのあたりの『間』はアドリブで出来る。

 

案の定、調査車両がホテルに入って行った時にご主人と浮気相手が乗ったタクシーのドアが半開きになって、タクシーの車内は灯りが点いている。

 

後部座席からもうひとりのS級探偵がシッカリと、タクシーのドアから、ニョキっと出て来る女性の足から、2人が降りてフロントに入るまでを撮影。

 

注釈

基本的にラブホテルの場合、後ろで駐車場待ちをしている車や人の方は、あまり見ないのです。ホテルに入ること自体に何か後ろめたさと云うか、気恥ずかしさがあるからなのでしょう。

 

その後、調査車両を同じラブホテルの駐車場に停め、S級探偵がホテルのフロントに入り、部屋を一室借りて、その部屋に入ってフロントに電話。

 

探偵  「チョット車に忘れ物取って来るから一度出るよ」

フロント「それではパートナーの方とお電話変わって頂けますか」

探偵  「後から来るから、今はひとり。直ぐ戻って来るから」

フロント「ん・・。分かりましたそれじゃ開けて置きます」

 

何故、こういうことをするかと云うと、『探偵業の業務の適正化に関する法律』という、長ったらしい名前の法律が2007年に施行されてから、

 

『他者の所有する敷地内に片足でも踏み入れて撮影をしてはいけない』

 

もし、この行為をしてその敷地の所有者が訴え出た場合、探偵業務を何カ月間か停止されていまう恐れがあるのです。探偵の仕事もけっこうな制約があるのです。

 

こうして、お金を払って、部屋を借りれば駐車場に停める権利はこっち側にあるので、何をしようが勝手なわけなのです。

 

そして、車に戻った探偵が、新人探偵 茂に「茂くん、302号室へ入ってしばらくビデオでも観ていて」と言うと茂は、

 

「なんでですか!」と少しキレ気味に言うが早いか、食い気味にS級探偵が

 

「誰か部屋にいなきゃダメなんだよ とにかく連絡するまで行ってこいよ!」とS級探偵はいよいよ、キ  レた口調で返すと。茂は

 

  「どういう風に入るんですか?」

 

探偵「は・・・!?どういう風って・・?鍵開けて入ればいいだけ・・」

 

探偵「ひょっとして茂くん ラブホテルに入ったこと無いの?」

 

 

茂 「ありますよ!!」と顔を真っ赤にしていい返す。

 

この時S級探偵2人は、茂がラブホテルに入ったことが無いことを確信した。

 

探偵 「このキーカードをドアに差し込んで、入ったら真っ暗だから右横にそのカードを差すところがあるから、そこに上から差せば電機が付くから、後はベットの枕元かテーブルの上に色々説明の書いてあるメニューみたいなのを見て、わからなかったらフロントに電話すれば教えてくれるから」

 

そう云うと新人探偵 茂は、重い足取りで、フロントからホテル内に入っていった。

 

調査車両に残ったS級探偵2人は、ダッシュボードの上にレックボタンを押せば大丈夫な様にセットする。目視 つまり、両名が出てきたところを確認してから、カメラを起動するとそうしても2~3秒のタイムラグがでるのです。2~3秒というと、約5mくらいは進んでしまうので、瞬間が勝負。

 

ここまでする必要は無いのかも知れませんが、探偵もS級になると完璧を常に求める。

 

出て来る時間帯近くでは、そのまま定点でカメラを回しっ放しにします。この時の状況とは少し違いますが、以下の写真のイメージです。

 

 

一通りの準備をし、1人の探偵は、ホテルの外観を録りに表へ出、直ぐに車に戻って来て、運転席の椅子を「グッ」と、前に引っ張り後部座席に乗り込んだ。

 

もう1人の探偵も、同じく後部座席に座っている。ビデオのレックボタンはリモコンで押せるのでそこは心配無い。後部座席に乗るのは、後ろの窓にフィルムが貼ってあるので、どこから見られても人が乗っているようには見えないのです。

 

基本的にどんな現場でもそうですが、長時間 同じ場所に立っているのも、車の運転席と助手席に人が乗っていれば、ただの不審者。

 

ましてや、ラブホテルの駐車場は暗いし、車はプリウスだからエンジンがかかっているかどうかも分からない。

 

そうこうしているうちに、このラブホテルのサービスタイムが終わる時間の30分前。色んな不倫か恋人同士か夫婦か分からないカップルが出て来る。

 

デリヘル嬢のお迎えの車まで、表で停まっている。

 

定点ビデオカメラはもう既にレックボタンを押して、回しっ放しに。

 

そして、S級探偵が茂に電話をして

 

「チェクアウトして車に戻って来て」

 

5分ほどで、茂が戻って来た。1人の探偵が調査車両から降りて運転席に座わりリクライニングを出来る限り倒す。茂が助手席のドアを開けて乗ろうとするので、

 

「後ろ!」とだけ言うとここは直ぐに理解したのか茂は後部座席に乗り換えた。

 

茂  「あの~自動精算で領収書が無いんです」

探偵 「自動精算であろうがなかろうか領収書が出ないはずないでしょ」

茂  「それが出ないんですよ」

探偵 「そんなこと無いよ。精算機の横に電話かなんか付いてるはずだから、言って領収書もらって来て」

 

渋々、茂はもう一度戻って帰ってきたがヤハリ出ないとのこと。時間も時間なので、探偵が

 

「領収書なかったら自腹だからね!」

 

茂は「4,800円っすよ!自腹なんてムリっすよ!」

 

そんな会話をしているうちに迎車のタクシーが一台入って来て、フロント前で停車した。

 

探偵「これや!」

 

定点カメラと、S級探偵2人のカメラ。そして茂のカメラ計4台のカメラが対象両名がタクシーに乗る瞬間を撮る姿勢を取った。

 

タクシーがラブホテル駐車場に入って来てから、約2分後。ご主人と女性がフロントから出て来た。タクシーの後部ドアが静かに開くとともに、タクシー車内の灯りが点く。探偵3名が、どのアングルから撮っているのかは、この時点ではお互い分からない。

 

タクシーの扉が「バタンッ!」と音を立てて閉まり、ゆっくりと調査車両の前を通り過ぎて行く。

 

タクシーの後部座席に座っているこの不倫カップルは、笑顔で話している様子が伺え調査車両になんて何の興味も無い様子。

 

運転席のS級探偵が 「ガリガリッ・・」と音を立ててリクライニングを戻し、手早く助手席の定点カメラのスイッチを切ってそのまま後ろに渡す。

 

タクシーの姿が完全にラブホテル駐車場を出るのと同時に、調査車両もハンドルをキリながらアクセルを軽く踏みタクシーに続いた。そのまま、タクシーは来た道を戻るように、東京駅方面へと走しる。

 

調査車両は静かに、絶妙な間を取りながら絵面からいえば、『悪役』の様にその後を追う。

 

探偵「飯行くか・・?」

 

誰に問うわけでもなくつぶやく。

 

茂  「いいっすね!」

 

探偵 「いいっすね・・?対象達が飯食いに行くかって言ってるんだよ」

 

茂  「・・そうっすよね!皆さん食事していないからお腹が減ったのかなって思って・・。僕は大丈夫ですけど!」(茂はなにかにつけてテンションが高い)

 

この期に及んで、2人のS級探偵はもう、返す言葉もなかった。

 

そうこうしているうちにタクシーは東京駅の八重洲口のタクシー乗り場の方でどうも停まりそうな雰囲気。

 

探偵 「八重洲からなら、飯は無しか・・・。ホテルでやるだけ?」

 

茂  「セフレですね!」

 

探偵 「まだ、分からない。気を抜かないで」

 

やはり、タクシーは八重洲口タクシー降車場で停車し、ハザードを出した。調査車両は少し離れた場所で停車し後部座席に乗っていた探偵が1人降り、小走りに対象達の死角まで行きカメラを回す。

 

茂が張り切って降りようとするのを運転していた探偵が制し

 

 「茂くん運転変わって、その辺で待ってて。」

 

 「後から連絡するから指示待ちね」

 

茂「分かりました!」

 

S級探偵2人がご主人と浮気相手を尾行しだした。この2人の中では打ち合わせ等はほぼ無く。たまにインカムで、互いの立ち位置を確認するだけ。

 

東京駅内のJR山の手線改札の前で2人は10分程 談笑したあと、女性が改札を抜けご主人は姿が見えなくなるまで、改札手前で見送った。よくある光景。

 

探偵達は、そのまま女性の自宅を特定する為にそれを追う。

 

―― ご主人は帰らないのか?帰宅するならこの山手線で上野方面へ行って日比谷線で竹ノ塚でしょ・・。

 

等と考えてはみたが、今はこの不倫女性を追うことに集中する。

 

探偵は茂にLINEで「山手線品川方面乗車」と知らせるが、が既読が付かない。

 

有楽町通過・新橋通過・浜松町通過・田町通過・品川通過とLINEでいちいち茂に知らせるが既読が付かない。

 

「大崎通過」とLINEを入れた後、ようやく既読が付いた。

 

五反田駅で、女性は降りそのまま歩道橋を渡ってスーパーへ入り、買い物を済ませ。徒歩で帰宅。

 

女性の自宅を特定した。自宅は少し大きめの戸建て住宅で、ご丁寧に表札に居住者全員の名前と住所まで書いてある。今時、珍しい。その中に1人だけ、お年寄り風の女性の名前が記してある。

 

概ね、その家の玄関を見れば、居住実態が想像出来る。おそらくは母親1人をまじえた、既婚者であると推認出来た。一通り、自宅の撮影を終えてから、探偵は茂に電話を入れた。

 

探偵 「今、どこ?」

 

茂  「東京駅八重洲口のさっき降りたところの少し前にいますよ!」

 

探偵 「そこで何してるの?」

 

茂  「指示待ちです!」

 

探偵 「LINEで指示してるでしょ!」

 

茂  「・・・」

 

探偵 「もう先に帰れよ!」

 

S級探偵がいよいよ本気でキレた時、もう1人の探偵が

 

「もう、放っておきましょう。彼に何を言っても腹立つだけですしここまでやらかしてくれると逆に面白いじゃないですか」

 

「・・・。オレ15年探偵してるけど、あんなポンコツ初めてみた・・」

 

翌週の土曜日。依頼者さんからの要望で「この日も必ず女と会いますが、先週の方とは違うようです」

 

と言った連絡があり、3名の探偵達が現場に向かった。2名のベテラン探偵は同じだったが運転手だけは茂ではなかった。

 

一度、同じ人物を尾行調査しているので対象の癖や動きは分かっている分、初見の調査よりは随分やりやすく、何の問題もなしに先週同様キッチリと『不貞行為』の現場を押さえて、調査を完結した。

 

そして、取締役の青木が依頼者さんと一緒に提携している弁護士のところへ同行し、浮気相手の女性2名に慰謝料請求の内容証明を送付してもらい、最初の女性から140万円。2人目の女性から150万円の慰謝料が支払われ示談となった。

 

ご主人はと言うと「携帯にGPSを付けてもいいから、なんとかやり直してはもらえないか」と懇願され、依頼者さんは、

 

「あなたのこれからを見てから決めさせてもらう」

 

そう云い放って、ご主人はせっせと、食事後の皿洗いをしているんだそうです。

 

「雨降って地固まる」の言葉通り、今は少々ギクシャクしている様ですが、無事、依頼者さんのご要望通りの結末を迎え、我々の使命は終わった。

 

 

さて、時間をさかのぼって、やらかし新人探偵『茂』がどうしているかを、書かない訳にいきませんのでもう少しお付き合い下さい。

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女性の自宅を特定して仕事を終えたベテラン探偵2人は、茂が来ていないことを知り、五反田駅から電車で直帰した。

 

翌日、会社に行き取締役に昨日の顛末、つまり茂のことを相談した。

 

取締役 「昨日はお疲れさま 問題は無かった?」

 

探偵  「まぁ・・。調査はなんとか」

 

取締役 「で、新人君はどうよ」

 

と、半笑い気味に聞いてきた。

 

探偵も半笑い気味に、

 

探偵  「彼の面接は誰がしたんですか?」

 

取締役 「オレ・・」と、また笑顔でいう。

 

探偵  「そうですか・・彼の経歴はどんなものなんですか?」

 

取締役 「国立大学卒業で教員免許を持っていて、ITには相当詳しいらしいよ。まだ大学を出たばかりの23歳」

 

探偵  「ヘぇ・・。国立大学卒業の教員免許ですか。で、なんで探偵に?」

 

取締役 「ちゃんと話聞いてなかったから忘れた。教員免許は国語と英語。それと普通免許と2輪も持ってるよ確か。なにかあった?」と、また笑いながら聞く。

 

探偵  「国語ね・・・。社会に出たことが無いことを差し引いたとしても、もう二度とウチの班には入れないで下さいね」

 

と、今度は真剣な顔をして探偵は言った。すると、取締役は笑いを押し殺すように

 

取締役 「やっぱりあかんか・・。」と、いつもの関西弁で笑いながらいう。

 

探偵  「青木さん笑ってるじゃないですか!知ってたんでしょう?他の班からもそれなりの報告は入ってるでしょ?」

 

取締役 「うん、みんな自分と同じことを言ってる」

 

探偵  「だったら先に言って下さいよ、あんな簡単な調査で危うい場面もあったんですよ」

 

 

と、少し怒り気味にいう探偵。

 

取締役 「いや~自分やったらなんとか使いこなせるかと思って」 笑いながらいう。

 

探偵  「とにかく、社会性とか常識でいうなら小学生レベルですよ。」

    「ハッキリ言って、彼にこの仕事はムリですよ。研修生でしょ?なんでやめさせ無いんですか?」

 

取締役 「約束で、研修1ヶ月になってるからさ・・。車の運転くらいは出来るかなぁって思ってサ」

 

探偵  「車の運転は出来ても、動かさなきゃ意味ないですよ。」

「昨日、自分ら五反田から電車で帰って来たんですよ」

 

探偵の言葉も少々熱を帯びてきた。

 

取締役 「ヤッパリ、みんな言うこと一緒やけど・・。教えても治らない?」

 

探偵  「治るならいいますよ。青木さん一度、彼を連れて調査に行ってみて下さい。青木さんなら手出ますよ」

 

取締役 「分かりました」

 

そんな報告を受けて、取締役は事務員に「茂にすぐ来るように言って」と告げた。1時間ほどして茂が足立事務所に顔を出し、大きな声で「おはようござま~す!」と取締役や事務員。報告をした探偵がいる部屋に笑顔で入って来た。

 

取締役は茂に向かって

「寝泊くん(ネドマリ)【茂の苗字】ちょっとこっちに来て」と、だけ告げ応接室へと先を歩いた。その後に茂が続いた。

 

対面の椅子に2人は腰を降ろし、取締役が口を開いた。

 

取締役 「キミさぁ。2週間目になるけど、今なんでオレが呼んだか分かるよね?」

 

茂   「はぁ・・。どうしたんですか?」

 

取締役 「え・・。分からんの?だったら言うけど」

 

「キミこの仕事向いて無いんじゃない?」

 

茂  「なんでですか!結構向いてると思いますよ!」

少しキレ気味にいう。

 

取締役「へぇ・・。みんなから苦情が出てるんやけども」

 

茂  「苦情ってなんすか?」

 

取締役「いや~・・。一緒に調査に出るのは嫌やって。これって言うものは無いんやけれど・・。皆が同じこと言うにはそれなりのことがあるんでしょ。自分で分からない?」

 

茂  「もうチョット要領が分かって来たら自分はあの人達より絶って~出来る人間ですよ!」

 

取締役「もうチョットって・・。どれくらいのこと言ってるの?」

 

すると茂は何か吹っ切れた様に。

 

「自分ダメっすか!!ダメっすか!」

 

と、茂は完全に開き直った。

 

取締役「難しいね・・」

 

茂  「それじゃあ今日なんで呼んだっすか!ダメなら電話で十分じゃないっすか!!ワザワザ呼び出してなんなんっすか!この無駄な時間!」

 

と、取締役の青木に食ってかかって来た。

 

取締役「あのな・・。こんな話電話で済むことじゃないやん」

 

茂  「電話で十分っすよ!30分もかけて来る意味無いじゃんかよ!もういいっすよ!!」

 

茂はそう言いながら、鞄を持って出て行こうとした。

 

取締役が「チョット待てよ」といい。茂の前に立ちはだかった。茂は強引に取締役の横を抜けようと当たった肩を押しながら応接室のドアを開けようとした。

 

茂が「どけよ!」と言った瞬間、取締役の青木が茂の左腕を取ってそのまま椅子に押し倒した。茂は目を丸くして、取締役の青木を見つめる・・。

 

「そこじゃ!その態度がお前の本性じゃ!」

 

そう一喝すると、茂は涙をボロボロ流しはじめた。そして

 

「分かってますよ・・。自分が出来ないことは・・自分が一番分かってるんです・・。」そう静かに茂がいう。

 

そして茂が会社から預かっていた。カメラやPASMO。そして僅かな経費と領収書の類を机の上に置いて、去って行った。

 

取締役の青木は、少し可哀想な気持ちに囚われていた。

 

そして、皆がいる事務所へ戻り茂の置いて行った領収書を事務員に渡した。30分程して事務員が、

 

「茂くん3食会社の経費で食べてましたよ」すると、横にいたベテラン探偵が、

 

「確たる証拠は無いですけど。車のドアのポケットに入れてある駐車場代なんかに使う500円玉も、結構あいつパクってましたよ」

 

その時、取締役の青木は、少しでも可哀想に思った自分を可哀想に思ったと同時に「2~3発殴っておけば良かった・・」

 

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