実録 結婚詐欺事件|400万円取り戻した男の妻が、最初の被害者だったお話し
実録 結婚詐欺事件|400万円取り戻した男の妻が、最初の被害者だった話
2010年のある日、保険代理店の営業をしている51歳の女性が、当事務所を訪れた。
相手は、品川の高級オフィスに会社を構える輸出入業の男。
ベンツに乗り、ロレックスを着け、半年後には上場すると話していた。
だが、その男には妻がいた。
そして1年後、私はその「妻」と、思わぬ形で再会することになる。
「半年後に上場するから、800万円分の株券を担保に500万円貸してほしい」
そう持ちかけられた依頼者は、当時はまだ実物の株券が発行されていた時代だったこともあり、その800万円分の株券を実際に受け取り、500万円を貸した。インサイダー取引まがいの話だが、保険営業として真面目に働いてきた依頼者でも、上場や株券、会社実態の話までは専門外だった。
ところが、約束の返済期限を過ぎても金は戻ってこない。「上場が遅れている」「取引先からの入金が遅れている」と説明されても、話の中身は曖昧で、依頼者には判断しようがなかった。
そして極めつけが、デートはするが夜は必ず帰宅し、一緒に宿泊したことが一度もない。普段は連絡もほとんど取れない。
そんな折、男から「もう300万円貸してほしい」と打診された依頼者は、さすがに不安を覚えて当事務所を訪れた。
調査開始 |豪華な”会社”の正体
まず、男が会社を構えているという品川の高級オフィスから下調べを始めた。
建物は確かに50階建ての立派なビル。しかし、相談時の情報整理でレンタルオフィスであることは既に判明していた。依頼者は「レンタルオフィス」という言葉自体を知らなかった。それは無理もない。一般人にとってはレンタルオフィス=胡散臭いという認識すらない時代でもある。
ただし、上場間近という会社がレンタルオフィスに本社を置くというのは、この業界を知っている者から見ればほぼあり得ない話である。
調査員は内覧を装ってそのレンタルオフィスに入り、家賃やオプションサービスの内訳を細かく把握した。45階にあるそのオフィスは、窓から東京を一望できる豪華な空間だった。他のレンタルオフィスとは一線を画す設備で、素人が騙されても仕方ないと思える内装。バイリンガルの女性秘書が常駐し、来客があれば豪華な会議室を案内する。
しかし、聞き込みを進めるうちに、決定的な事実が浮かび上がった。
男が契約していたのはレンタルオフィスですらなく、バーチャルオフィスだった。
部屋を借りているのではなく、客が来る時だけ会議室と秘書を時間貸しで利用するという仕組みである。月の固定費は4万円。豪華な会議室は、誰でも金さえ払えば一時的に「自分の会社の応接室」として使える。
会社登記簿を引いて、全てが繋がった
次に、男の会社の登記簿謄本を法務局で取得した。
そこには「清算中」の文字が記されていた。
ただし、過去の登記履歴を遡ると、かつてこの会社は年商数十億の商売をしていた形跡があった。何かあって会社を畳んでいる最中なのか、あるいは過去の栄光を背景に詐欺の道具として使っているのか。
そして調査の最終結果として、以下が判明した。
- 上場の予定など一切ない
- 男には既に妻がいる
- 男の実年齢は72歳(自称60歳)
初回の対決 |青木の同席で全てを認めさせる
依頼者に報告した上で、男と2人で会う約束を取り付けてもらった。場所は横浜にある静かな喫茶店。
私はその場に同行した。
弁護士法の制約があるため、私が男と直接交渉することはできない。しかし、依頼者の隣に座り、依頼者にアドバイスを伝えながら同席することは合法である。
男は私の存在を見て、何かを察したようだった。
依頼者が「全部調べてもらいました」と切り出した瞬間、男は何を言っても無駄だと悟ったのだろう。全ての嘘を認め、依頼者に謝罪した。妻がいることも、年齢を偽っていたことも、上場の話が嘘だったことも、全て。
その後、500万円の返済と慰謝料200万円が支払われたと、依頼者から報告があった。
私は、これで一件落着したと思っていた。
1年後、再び鳴った電話
それから1年が経った頃、事務所に1本の電話が鳴った。
事務員が応対した後、私に電話が代わった。相談者は別の女性だった。話を聞き始めて3分ほどした頃、私はある違和感に気づいた。
「その男性、山本(仮名)って名前じゃないですか? 品川で会社を持ってる?」
電話の向こうの女性が驚いた声で答えた。
「は……間違いないです」
すぐに面談を設定した。話を聞けば、手口は前回とほぼ同じだった。お見合い、起業家を名乗り、ベンツとロレックス、品川の豪華オフィス、上場話、そして金の借入。被害金額は400万円。
完全に同じ詐欺師だった。同じ手口で別の女性を引っかけている。
調査はほぼ必要なかった。前回の調査で全て分かっている。今回は金を取り戻す方法だけを考えればよかった。
2回目の対決 |「ご無沙汰、ケンちゃん」
前回と同じく、依頼者に男との2人での待ち合わせを取り付けてもらった。場所は、男の“オフィス”が入っているビル1階のオープンテラス。
当日、依頼者は怒り狂った大学生の長女を連れて、テラスで男を待っていた。私は少し離れた場所で待機していた。
時間通りに、男が現れた。
仕立ての良いスーツを着こなし、ふんぞり返って笑いながらコーヒーに手を伸ばす男。1年前と全く同じ姿。
私は男の後ろに回り、肩を叩いた。
振り返った男は、私の顔を見て二度見した。
「ご無沙汰、ケンちゃん」
私は笑顔で言った。
男の顔から、見る間に血の気が引いていった。
「あ、あおきさん……どうも……今日は、何かお仕事ですか?」
精一杯の作り笑いで、男はそう絞り出した。
「うん、ケンちゃんと一緒に警察行こうって思ってな」
私は笑顔を崩さず、そう告げた。
全てを悟った男は、うな垂れて言った。
「事務所でお話ししましょう」
そう言って、フロアの中で最も豪華な、10分1,100円の会議室へと我々を案内した。
会議室での顛末
私は依頼者から2つ離れた椅子に座り、オプションで運ばれてきたコーヒーを飲みながら見守っていた。
母娘の怒涛の追及に、男は何らなすすべもなかった。ひたすら謝罪し、許しを乞うのみ。
最終的に、400万円の返済と慰謝料200万円で話はまとまった。
男は「離婚して、今は引っ越しをしている」と言った。私は念のため、男の現在の自宅を確認することにした。私と調査員1名、依頼者と大学生の娘の合計4名が私の車に乗り込み、男の運転するシルバーのベンツCクラスの後を追った。
そして、男の自宅に到着した。
男が「お茶でも」と言って、奥に声をかけた。
しばらくして、女性が一人、部屋に入ってきた。
私はその顔を見た瞬間、言葉を失った。
1年前、私の事務所に相談に来た女性だった。
あの男に500万円を貸し、妻がいることを知らず、泣きながら真実を聞いた女性。
その人が今、男の「妻」として、私の目の前に立っていた。
男は、彼女が私の元依頼者であることを知っていた。何かしら許しを請う目的で会わせたのかもしれない。追い詰められた人間の浅はかさを、少し哀れにも思った。
あれから16年。あの男は今もこの世にいるのか、彼女が今もあの男の妻として穏やかに過ごしているのか、それとも別の道を歩んだのか、私の知る由もない。いちいち過去の案件を蒸し返すことはしない。それが探偵のお仕事。
※個人情報保護のため、登場人物・場所等には一部修正を加えていますが、内容は実際の相談・調査をもとにしています。
結婚詐欺でよくある危険なサイン
結婚詐欺の相談では、次のような共通点が見られることがあります。
- 結婚の話が出ているのに、自宅に行かせない
- 勤務先や会社の実態がはっきりしない
- 高級車、時計、オフィスなど、見た目の信用を強く見せる
- 上場、投資、事業資金、相続などを理由にお金を求める
- 家族や友人に会わせない
- 返済期限を過ぎると、もっともらしい理由で先延ばしする
- 連絡が取れない時間帯が多い
- 身分証、独身証明、登記簿などの確認を嫌がる
恋愛感情がある時ほど、本人だけで冷静に判断するのは難しくなります。不安を感じた時点で、相手を責める前に、まず事実を確認することが大切です。
相手を信じたい気持ちがあるからこそ、疑うのではなく、事実を確認する。そのための調査です。結婚、同棲、金銭の貸し借りで不安がある方は、早い段階でご相談ください。
探偵東京・浮気調査<足立区本社>の青木ちなつ探偵調査へ
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結婚詐欺に関するよくあるご質問
Q. 結婚詐欺の調査はどのように行いますか?
A. 相手の身元・職業・婚姻歴・財産状況・会社の実態などを総合的に調査します。会社の登記簿謄本の取得、自宅や勤務先の確認、聞き込み調査などを組み合わせ、相手が話している内容と事実とのズレを明らかにします。
Q. お見合いパーティーで出会った相手にも調査は有効ですか?
A. 有効です。お見合いパーティーや結婚相談所で出会った相手による結婚詐欺は実際にあります。本人の自己申告だけで信用してしまう前に、客観的な事実確認を行うことをお勧めします。
Q. 高級オフィスに勤務している人なら信用できますか?
A. 油断は禁物です。レンタルオフィスやバーチャルオフィスを利用すれば、月数万円で高級ビルに「会社」を構えることができます。ベンツ・ロレックス・高級スーツも、見栄えだけなら演出可能です。本物かどうかは登記簿や実態調査で確認する必要があります。
Q. すでにお金を貸してしまった場合、取り戻せますか?
A. 状況によります。詐欺の証拠が揃うことで、弁護士による返金請求や慰謝料請求を進めやすくなる場合があります。早い段階で相手の身元や会社実態を確認することが大切です。
Q. 弁護士に相談する前に探偵に依頼するメリットはありますか?
A. あります。弁護士は法的手続きの専門家ですが、相手の実態調査は探偵の領域です。証拠が揃った状態で弁護士に持ち込むことで、解決に向けた判断がしやすくなります。当事務所では調査終了後の弁護士紹介も行っています。
Q. 交際相手が既婚者かどうか調べられますか?
A. 調査可能です。住所、生活状況、家族構成、勤務先の実態などを確認し、相手の説明と事実が一致しているかを調べます。結婚の約束や金銭の貸し借りがある場合は、早めの確認が重要です。
Q. お金を貸す前に相談しても大丈夫ですか?
A. むしろ貸す前の相談が大切です。お金を渡した後は、相手が逃げたり、証拠を消したりすることがあります。不安がある段階で、相手の身元や会社実態を確認することで被害を防げる場合があります。