映画さながらの探偵の企業潜入調査⑤

映画さながらの探偵の企業潜入調査⑤ 最終章

前回までのあらすじ

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200名規模の中小企業の経営者から、社員の横領事件の解決を受任した青木ちなつ探偵調査。取締役の探偵 青木と、名バイプレーヤー探偵 井口が会社に社員として潜入。おおむねの犯人を絞り込んだがその犯人と思しき連中が一癖も二癖もある若いヤンチャなひねくれ者。

 

その連中と探偵 青木の真っ向勝負が始まった。

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現場営業のBの犯行だということは、もう落ちたも同然だがBとFの共犯関係を立証するのが難しい。他に名前の挙がっているMとAは取り敢えず、この2人とは関連性が感じられないとして、本丸のBとFを主眼に置いた。

 

 

少々、荒業ではあるがFを挑発して2~3発殴らせて、傷害事件も引っ付けて取引きしようかとも考えたがBをいとも簡単に床にひっくり返したことや、警察上がりかと思っているだろうFは今更そんな挑発には乗ってこないだろし・・。

 

 

青木はしばらく考えていたが、答えは出たようだ。

 

 

翌日、青木はもう一度Bを呼んだ。

 

「ところでBくんよ、会社の備品を勝手に売って小遣い稼ぎしてる噂を聞いたんやけど」

 

Bは顔面を引きつらせながら、

 

「そんなことしてません」と消え入る様な声で言った。

 

 

「ホンマやな?証拠が出てきたらどうする」と青木がいうと、Bは無言で俯きながら何も答えない。青木はパソコンに取り込んだ、音声を黙って流しはじめた。

 

 

そこには、探偵 井口とBとFのリアルな音声がハザードの音と共に流れている。

 

 

「この声誰や・・」と探偵 青木は少し低音でいう。俯いたままのB、

 

 

「誰やって聞いてんじゃい!」と、今まで聞いたこともない大声でBに迫った。

 

 

「スミマセン僕とFさんと井口さんです・・」俯いたままいうB

 

 

「これどういう事か分かるよな?泥棒っていうんやで」

 

 

「ハイ。僕やめます」

 

 

「お前アホか?やめて済むとでも思てんのか?話しはここからじゃ」

 

 

そう言って、探偵 青木はシルバーのアタッシュケースに入った『指紋採取機器』を出し。

 

 

「今から指紋取ってもらうからな、これは社長はじめみんなに協力してもらってるから」

 

 

この指紋採取機器は、警察が使っているものとほぼ同じレプリカ。『蛇の道は蛇』という通り、探偵のグッズとして、民間の指紋採取業者からもらったものである。その時に指紋採取のレクチャーも受けている。

 

 

あらかじめ作ってあった社員、人数分の指紋を採取する用紙を用意し、そこに『任意提出書』つまり、この指紋採取は本人の任意によって採取するものである。承諾書にサインをさせて取ったものであるという説明をして、社長達の指紋と承諾書をBにワザと見える場所に置いて、Bに指紋を採取させるためである。

 

以下、青木作成の『任意提出書』原本そのまま。

―――――――

・ 所

 

平成  年  月  日

 

先般より頻発している社内窃盗事件は、警察が介入する迄の切実な問題である事は承知されているかと存じます。

 

社員の皆さまにおかれましては、不愉快極まりない気持ちのまま就業していることかとお察し致します。本件責任の所在の一因は会社。つまり取締役・役員による監督不行き届で有る事も否めない事実と認知して居ります。

 

しかしながら、会社としましては本件をこのまま放置することは社の存亡にまで影響を期すと位置付けており、解決の一助になる方策を思考錯誤した結果。苦渋の選択ではありますが、指紋採取及び抜き打ち所持品検査を敢行致します。これは、社員の皆さまが健全に就業出来る環境を今一度取り戻す為でもあり、経営陣と社員が一丸となり本件を一日も早く解決に導く行為で有ります。何卒ご理解ご協力願えれば幸甚に存じます。

 

尚、本書面は任意記入です。個々の信条・理念に抵触する場合。また、理由の如何を問わず、皆さまは不同意の権利を有しております。ゆえに、拒否権を行使しても何等不利益を与えるものでは有りません。

 

□ 指紋採取に同意します  □ 所持品検査に同意します □ 何れにも同意しません

□上記、記載の意味を全て理解した上で署名・捺印・押印した。

 

氏名                     ㊞

 

住所                                   

 

  • 本書に署名・捺印・押印された、皆さまの指紋・所持品については本件外では一切口外及び提出・使用しない事を誓約致します。
決裁印 決裁印         〇〇〇〇〇株式会社

         ○○○○○○  ○○ ○○  ㊞

―――――――

 

ホントはこんな指紋など採取しても物理的には全く役に立たないのだが、Bに本格的な仰々しいもので、身の危険を感じさせる青木の綿密な陽動作戦である。

 

 

Bは黙って青木の指示にしたった。指を1本ずつ黒いスタンプボックスに青木がBの指を持って、1本1本を丁寧にグルッと指先の指紋がある部分を転がすように、スタンプのインクが付く様 両手の指、用紙に押させた。

 

 

そして、手のひら用の少し大きめのマスに指を除いた、手相を見る時の手のひらにスタンプのインクを付けて押させた。(お相撲さんの手形の指のないとこ)

 

 

全て取ったあと探偵 青木は、

 

「よっしゃ、ご苦労さん。石鹸で綺麗に洗っておいで」とBに告げると、Bは洗面所へ向かった。

 

 

手を洗ってすぐに顔色を失ったかの形相でBは青木に近づき。「チョットいいでしょうか?」と、「はっ?」と聞き直さなければいけないほどの小さな声で言った。

 

 

探偵 青木は、Bをいつもの奥の応接間にいざない、いつもの椅子に対面で座ったが、Bは背筋を伸ばし涙をボロボロ流し黙っている。

 

 

「全部お話しますので警察だけは勘弁して下さい」と顔を涙でグチャグチャにしながら青木に懇願するB。

 

 

Bが落ちた。

 

 

最後に金が無くなった日のことを全て白状したが。

 

 

探偵 青木は手を緩めない。

 

 

「それで?Fと山分けしてたんか?」と問うと、

 

 

「いえ・・。それは・・・」と涙がとまったBは下を向きながら答えようとしないところに、青木が畳み込む。

 

 

「言いたくないなら、何も言わんでいいよ。今から警察行こ」

 

 

「それだけは勘弁して下さい!」Bは椅子から降りて正座して懇願しながらふたたび涙を流し始めた。

 

 

「ちゃんと全部、話し出来るか?」と、優しくいう青木。

 

 

Bは黙って泣きながら俯いたままだったが、そのまま黙り続けている姿に業を煮やした青木は、机が割れかと思うほどの力を込めて、「ドーン!」と机を叩きつけ、

 

 

「どないするんじゃ!!」

 

 

正座して俯いて泣いていたBはその音で身体がピョコンと浮いた瞬間、

 

 

「全部話します!」

 

 

「わかった、椅子に座り」と今度は優しく声をかける青木。

 

 

BはFとの共犯関係を全て話した。『完落ち』である。いつも、Bが金を抜きその三分の一ほどをFに取られていたこと、Fはこの横領事件では、決して自分の手を汚すことはなかったらしいが会社の備品を売っていたのはFが主導していたとのこと。

 

 

青木は、最後の金が無くなった日のことを特に細かく聞いた。

 

 

「あの日、お金を取ってFさんに連絡を入れたら、近所の『居酒屋日本海』にいるから来る様に言われて、そこへ行きました。そして7万円と、そこのお勘定を僕が払いました」

 

 

「何時頃でそこには誰が居た?」

 

 

「8時頃だと思います。Nちゃん(事務の19歳の女の子)と一緒に2階の個室です」

 

 

青木はメモに見取り図を書かせ、FとN。そしてBの座り位置まで書かせたあとBにこのままここに残る様に指示してバインダーと筆箱を持って応接室から出た。

 

 

そして、社長を見つけて、

 

「Bが完全に落ちましたのでFを呼んでもらえますか」と頼んだ。

 

 

すると、Fが社長に愛想笑いを振りまきながら事務所に上がってきたので、青木はFを手招きして事務所の入り口付近にある少し小振りで、テーブルと椅子が4つだけ置いてある部屋へ入る様に促し、Fはそれに従うものの社長が見えなくなると同時に、青木にはいまだにふて腐れた顔で、

 

 

「なんなんだよー」と少し小馬鹿にした言い方をしながらポケットに手を入れふてぶてしくその部屋へ入った。

 

 

青木は今までに無い口調で、

 

 

「オイF座れ」

 

 

と、呼び捨てで命令口調でいうとFは何か察したのか口答えせず青木の指示にしたがい座った。

 

 

「最後に金の無くなった15日の仕事終わりにどこに居た?」と青木が聞くと、Fは何かを思い出そうとしている振りをする。

 

 

「お前が覚えてないんやったら、オレが教えたろか?」Fの目は泳いでいるというか卓球の試合を見ているかのような、目の玉だけがあちゃこっちゃ、動き続けて止まらない。

 

 

「そこの居酒屋日本海で事務の未成年のNちゃんと飲んでるとこにBが来た。思い出したか?」

 

 

Fは身体を硬直させて、黙っている。

 

 

「そうか・・。返事せえへんかったらおのれもBと一緒に刑務所行ってこいや」

 

 

青木が吐き捨てる様にいう。

 

 

「スミマセン・・。その通りです・・。隠し事はしませんので警察だけは・・」予想外に早く落ちたF。

 

 

「そうか・・。白状したか・・。これ全部録音してるからこのまま警察へ今から一緒にいこかね?」

 

 

青木は警察に行く気はサラサラ無いが、これは青木の積年のFに対する憎悪からくるチョットしたいじめ。

 

 

「お前ここに居れよ」とそう言い残して、青木は部屋を出て事務職の男性社員を呼び「チョットココ見張っててくれますか」

 

 

とFが逃げない様にとお願いし、社長のもとに行き全て解決したこの事情を全て話すと、社長は安堵と同時になんとも苦しそうな表情を浮かべて。

 

 

「それじゃ、自主退職という形で」というが、探偵 青木は強く。

 

 

「社長甘い!十分解雇できる事件です。そんなことをすれば他の怪しい者もまだいますので舐められます。これは見せしめの為にも懲戒免職です!」と進言すると社長は無念そうな顔はしたもののそれを了承した。

 

 

青木はすぐに全てをレポートにまとめた。そして、社員全員を呼び今回の事件の顛末を訓示するスピーチ原稿を書いてほしいとのことでそのレポートも青木が即興で作成した。

 

 

その日の終業時に社員全員は2階の事務所には入り切れないので、1階の広い荷物置き場に社員を集合させ。社長は青木のレポートを片手に持ち。それを大声で涙ながらに読みながら、最後に、

 

 

「今回の事件の責任は全部、社長である私の脇の甘さから起こったことであります」と、言いながら社員全員に深々と頭を下げた。

 

映画さながらの探偵の企業潜入調査⑤ 最終章

     

 

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