
映画さながらの探偵の企業潜入調査④
前回までのあらすじ。
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社員200名規模の中小企業で社員による横領事件が起こった。その会社の経営者から犯人を見つけて欲しいとの依頼。探偵 青木はこの手の潜入調査が大の得意。
早速、先に潜入した探偵、井口から目ぼしい人物を特定したとの報告を受け。イヨイヨ探偵 青木がこの会社の渉外・法務係りの肩書きをもらい朝から社員として出社。そして、探偵 青木の作戦は順調に犯人に近づき始めた。
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その後も聴き取りをしながら、その合間に何度かBとFとすれ違ったが、ヤハリ完無視。もっというと探偵 青木に喧嘩を売っているのも同然な振る舞い。青木が「お疲れ様です」というと無視どころか顔自体を斜め上に向けて「ふん!」とでも聞こえてきそうな態度。ますます、ボルテージは上がるがそんなことはオクビにも出さない探偵 青木。
むしろ、そんな状態を楽しんでいるかのように、ワザとBやFの姿を見つけると近づいて話しかける。当然、それでも一切無視を続けるBとF。2人共若くて身体も大きいので、青木のようなオヤジなんて瞬殺できるとでも思っているのだろう。
その後、まだ営業として潜入している探偵 井口がBとFと一緒の車に乗って会社に戻って来た時、Fが青木の車を見つけると。
「またこの野郎来てやがる」と言っていたことを青木に報告。探偵 青木はもう今更腹も立たない。その言葉を笑って受け流した。
そして、Fとの面談の日が来た。奥の応接間にいつもの様に対面で座る探偵 青木とF。青木が、
「Fさん。会社に対して何か不満とか、改善して欲しいとか何かありますか?」
と、優しい口調で聞く。Fはズボンのポケットに両手を入れ、顔を斜め上に向けながら。
「なにも無いっスよ」と吐き捨てる様にいう。他の社員とは全く違う態度に
―― 分かり易いやっちゃな・・。
と、心の中で笑う探偵 青木。
「なんでもいいんですよ、給与面なんかでも不満はないんですか?」
「なにも無いっスよ!」と全く同じことを同じ態度でいうF。
「そうですか・・。そしたら、最近会社のお金が無くなっているということ知ってますか?」
するとFは身体の向きを反対側に向けアゴは上がったままで、
「犯人探しですか!犯人探してどうするんですか!今更見つかるわけないっしょ!」と、語気を強めていうFとは会話が成立しない。
探偵 青木は、
「それがね・・。見つかるんですよこれが」と、笑みを浮かべながら言い終わると、
「それじゃ、今日は終わりますのでまた来てもらうかも知れませんがその時は宜しくお願いしますね」
Fはそのまま何も言わずに不愉快そうに、大きな音をたてて椅子から立ち上がりドアを勢いよく開けてそのまま閉めずに、応接室から出て行った。
その後、青木は携帯電話で青木ちなつ探偵調査の50代で大柄な一見、刑事のように見える探偵、須藤に電話をし、
「須藤さん。1眼レフのカメラを持ってさ。ワイシャツにネクタイして、その上にジャージみたいなものを着て黒めのズボンにスニーカー履いて、こっちに来てくれるかな」
「そう、まるっきり刑事風の姿で。着いたら連絡くれますか」
と、青木が指示を出した。
30分ほどで探偵 須藤から青木の携帯に「着きましたよ」と連絡がはいると、青木は直ぐに階段を降り須藤に、
「この横の建物が営業社員が日報書くところやから、とにかく映ってようが映ってまいがどうでもイイから。バンバン、フラッシュをたいて、ほうぼうを撮るカッコをしてくれる」
青木は、営業達が帰って来る 日の落ちたピーク時を狙い、探偵 須藤の横で指示しながらフラッシュをたかせた。机の上から建物の中のトイレまで、果ては普段誰もいない二階まで上がり、写真を撮らせた。
これは青木の作戦のひとつで、一番人の多い時間帯に刑事風な大男が『現場写真を念入りに撮っている』光景を見せるのが目的。それを見ていた社員達は、驚いた顔をして遠目でジッとその光景を見ている。
「よっしゃ須藤さんもういいよ」と言うと、探偵 須藤は暗くなった表から会社と現場建物の外観を10枚ほど撮ってから戻っていった。
探偵 青木の作戦は見事に功を奏した。探偵 井口によると営業社員達の間で、探偵 青木は刑事上がりか刑事だという噂が浸透した。
そしてその翌日、Bとの面談。今まで100名以上の社員から聴き取りをした結果、噂話や想像。最後にお金が無くなった日の同時刻に、帰社していた社員達からBとFは勿論のこと他に2名。MとAの名前が挙がっていた。
特にBは、お金が無くなった日には必ず、出社していて最後に金が無くなった日には、Bが1階で営業が日報を書いた建物。そう、探偵 須藤が写真を撮っていた建物の机の上に、Bがトイレに行く時に置いたファイルの中の現金がなくなっている、と言ったものだったので、青木は社員への聴き取りの結果、この日におおよその狙いをつけていた。
Bが応接室に入って来た。Fと示し合わせたような態度のB。探偵 青木はいつもの様にも会社への不平不満を一応 聴いたが、全く意味をなさないことが分かっていたので、そこはほどほどにして、直球で、
「Bさん15日の夜。あなたが現金を入れたファイルを下の建物で、トイレに行っている間にお金が無くなったんですよね?」と切り出す。
するとBは
「オレの事疑ってるんだろ!オレは何も知らねえよ!」
「どうせオレはもう辞めるし関係ねえよ!」
と、全く取り付く島もない。青木は、
「イヤイヤ、何を言ってるんですか?あなたが犯人なんですか?話しを聞かせて下さいよ」といい。バインダーの中のA4の紙をBに見せるように、日報を書く建物内の見取り図を書き出した。
「てめぇ・・これ以上しつこいとぶっ飛ばすぞ!コラ!」と、青木に言い放ったと同時に立ち上がって青木に顔を近づけて恫喝し、襟首を掴んで上にグッともち上げ、そのまま一番奥に2つあるロッカーまで、凄い力で押し「ガっシャン!」とロッカーが大きな音を立てながらそのままま押しつけた。
青木は少々面食らって、怒りは沸点に達していたが、落ち着いて襟首を掴んでいるBの右手の手首を片手で掴み、反対側に捻じ曲げながら、Bの左足を払うと、大男Bはいとも簡単に、そのまま右側に転がったが青木の手はまだ離れずBの動きに合わせてBからマウティングポジションとった。合気道の真似事だったがこうも簡単に想像通りに行くとは青木も思っていなかった様だ。
(因みに青木は合気道の心得はほとんどなく、得意なのはボクシング)
顔をゆがめて倒れこんだまま、ほぼギブアップ態勢のB、その騒々しい音を聞きつけて、慌てて社長がドアを開けて応接間に入ろうとしたが、青木は社長に「このままにさせてくれ」と、目で合図を送ると社長は不安な顔をしながらもそーとドアを閉めて青木の指示に従ったが、そのままドアの向こう側で聞き耳を立てていた。
探偵 青木は、Bの手首を持ったまま、それを引っ張る形でBを自然な形で立たせて、
「えらいことしてくれんねんな、話しの続きするで」
一瞬で、逆転されたBは戦意喪失。先程とはうって変わって、身体を縮じめて締め上げられた手首を押さえながら、椅子に座り直し俯き加減になったところで、青木は見取り図を中央に置いて、話し始めたが探偵 青木の手は少し震えている。この震えは緊張などではなく、感情を押し殺している怒りからくるものなのだ。
「仕事から帰って来てここに入ってまずしたことは?」
「この端っこのデスクにファイルを置いてそのまま便所に行きました」
Bのいう通り見取り図に『ファイルを置いた場所』と書き込む青木。
「その時、建物の中には他に誰が居た?」
「Oさんがファイルを置いた反対側の右端に座ってました」
「他には?」と聞きながら見取り図にOさんが座っている場所を書き込む青木。
「Mさんがこの端に立っていました」
「で、トイレから出て来た時にはそのままOさんとMさんが居た?」
「いえ、出て来た時には誰もいなくて・・。そしてファイルを上の事務所に渡したら、あくる日 休みだったんですけど経理から電話が掛かってきて「ファイルにお金入ってないんだけど知らない?」って聞かれました」
「で、なんて答えた?」
「僕はその中に入っていると確信していたので「何かの間違いじゃないの?僕知りませんよ」って言いました」
「トイレは、小便?どれくらいの時間居たの?」
「5分くらいです」
「ふーん。うんこじゃないの?小便?」
「小便です」
「小便で5分って長くない?だいたい、男の小便の時間って1分か長くて1分13秒くらいって知ってた?」
青木はワザと『1分13秒』というリアルな数字を出すことによって、統計学を熟知している様に見せかけたのだ。心理学的にいうと奇数をいれると、人はリアルさを感じるらしい。
そこで、青木はワザと自分から。
「あ!そうか、トイレを出たドアのところで誰かと携帯で喋ってたのかな?」と水を向けるとBは、
顔色を変えなながらも、「そうです!」と答える。青木はそのまま間髪を入れずに「誰と喋ってたんや?」と少し声のトーンを下げて聞くと。
Bはオドオドしながら「Fさんとです」と答える。
「でも、この状況を客観的に見ると犯人は誰と思う」
「分かりませんが、Oさんだと思います」
青木はそこまで、聴くと
「ハイ、それじゃ今日はこれくらいにしてまた呼ぶと思うけどその時はすぐに協力してよ」
と、言ってBを帰らせた。勿論全て録音している。
青木はこれで、Bの犯行は完全に確信したが、2人の言動からFが関わっていることは間違い無いと踏んでいた。これから、BとFを関連付ける方策は・・・。
映画さながらの探偵の企業潜入調査 最終章へつづく・・・。
探偵東京・浮気調査<足立区・豊島区池袋>の青木ちなつ探偵調査へ
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