
教えて探偵さん。浮気相手が複数の場合⑤
④のラスト
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「領収書なかったら自腹だからね!」
茂「4,800円っすよ!自腹なんてムリっすよ!」
そんな会話をしているうちに迎車のタクシーが一台入って来て、フロント前で停車した。
探偵「これや!」
定点カメラと、S級探偵2人のカメラ。そして茂のカメラ計4台のカメラが対象両名がタクシーに乗る瞬間を撮る姿勢を取った。
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タクシーがラブホテル駐車場に入って来てから、約2分後。ご主人と女性がフロントから出て来た。タクシーの後部ドアが静かに開くとともに、タクシー車内の灯りが点く。探偵3名が、どのアングルから撮っているのかは、この時点ではお互い分からない。
タクシーの扉が「バタンッ!」と音を立てて閉まり、ゆっくりと調査車両の前を通り過ぎて行く。
タクシーの後部座席に座っているこの不倫カップルは、笑顔で話している様子が伺え調査車両になんて何の興味も無い様子。
運転席のS級探偵が 「ガリガリッ・・」と音を立ててリクライニングを戻し、手早く助手席の定点カメラのスイッチを切ってそのまま後ろに渡す。
タクシーの姿が完全にラブホテル駐車場を出るのと同時に、調査車両もハンドルをキリながらアクセルを軽く踏みタクシーに続いた。そのまま、タクシーは来た道を戻るように、東京駅方面へと走しる。
調査車両は静かに、絶妙な間を取りながら絵面からいえば、『悪役』の様にその後を追う。
探偵「飯行くか・・?」
誰に問うわけでもなくつぶやく。
茂 「いいっすね!」
探偵 「いいっすね・・?対象達が飯食いに行くかって言ってるんだよ」
茂 「・・そうっすよね!皆さん食事していないからお腹が減ったのかなって思って・・。僕は大丈夫ですけど!」(茂はなにかにつけてテンションが高い)
この期に及んで、2人のS級探偵はもう、返す言葉もなかった。
そうこうしているうちにタクシーは東京駅の八重洲口のタクシー乗り場の方でどうも停まりそうな雰囲気。
探偵 「八重洲からなら、飯は無しか・・・。ホテルでやるだけ?」
茂 「セフレですね!」
探偵 「まだ、分からない。気を抜かないで」
やはり、タクシーは八重洲口タクシー降車場で停車し、ハザードを出した。調査車両は少し離れた場所で停車し後部座席に乗っていた探偵が1人降り、小走りに対象達の死角まで行きカメラを回す。
茂が張り切って降りようとするのを運転していた探偵が制し
「茂くん運転変わって、その辺で待ってて。」
「後から連絡するから指示待ちね」
茂「分かりました!」
S級探偵2人がご主人と浮気相手を尾行しだした。この2人の中では打ち合わせ等はほぼ無く。たまにインカムで、互いの立ち位置を確認するだけ。
東京駅内のJR山の手線改札の前で2人は10分程 談笑したあと、女性が改札を抜けご主人は姿が見えなくなるまで、改札手前で見送った。よくある光景。
探偵達は、そのまま女性の自宅を特定する為にそれを追う。
―― ご主人は帰らないのか?帰宅するならこの山手線で上野方面へ行って日比谷線で竹ノ塚でしょ・・。
等と考えてはみたが、今はこの不倫女性を追うことに集中する。
探偵は茂にLINEで「山手線品川方面乗車」と知らせるが、が既読が付かない。
有楽町通過・新橋通過・浜松町通過・田町通過・品川通過とLINEでいちいち茂に知らせるが既読が付かない。
「大崎通過」とLINEを入れた後、ようやく既読が付いた。
五反田駅で、女性は降りそのまま歩道橋を渡ってスーパーへ入り、買い物を済ませ。徒歩で帰宅。
女性の自宅を特定した。自宅は少し大きめの戸建て住宅で、ご丁寧に表札に居住者全員の名前と住所まで書いてある。今時、珍しい。その中に1人だけ、お年寄り風の女性の名前が記してある。
概ね、その家の玄関を見れば、居住実態が想像出来る。おそらくは母親1人をまじえた、既婚者であると推認出来た。一通り、自宅の撮影を終えてから、探偵は茂に電話を入れた。
探偵 「今、どこ?」
茂 「東京駅八重洲口のさっき降りたところの少し前にいますよ!」
探偵 「そこで何してるの?」
茂 「指示待ちです!」
探偵 「LINEで指示してるでしょ!」
茂 「・・・」
探偵 「もう先に帰れよ!」
S級探偵がいよいよ本気でキレた時、もう1人の探偵が
「もう、放っておきましょう。彼に何を言っても腹立つだけですしここまでやらかしてくれると逆に面白いじゃないですか」
「・・・。オレ15年探偵してるけど、あんなポンコツ初めてみた・・」
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