
探偵による浮気調査 実例⑥
前回までのあらすじ。
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会社の接待で札幌に出張だという夫の申し込みメールが、自宅のパソコンと同期されていたため、偶然見てしまった依頼者である妻。そこには夫が専務をしている会社の社長と他に、全く見覚えのない女性の名前が2名。またご丁寧の飛行機の往復の便名までが書いてあった。
この会社の社長はボンボン社長で、夫とは同級生。いわゆる二代目社長である。そこで確信を持った妻である依頼者が弊社、青木ちなつ探偵調へ相談。調査が始まった。
札幌行きということで弊社取締役の青木が率先して、業界を代表するほどのスキルを持つS級探偵の梅田と中村を加えた3名の鉄壁ま布陣で、無事色々な難関をクリアしながら札幌市内のホテルのチェクインから、不倫グループ達が夕食の為に訪れた焼肉屋までの撮影を終える・・・。
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こ汚い焼肉屋に入った不倫グループ達が、カウンター席に座っていることを確認し、毒蛇色のレンタカーを不倫グループ達が出て来るところを、シッカリと確認出来る場所を確保した。そのすぐ後に青木が
「あ!」と叫んだ、
この店の横の道に見える。「生ラム肉」と書いた看板を見て。
「あれ、ススキノで有名なラム肉屋や!」と興奮気味に言った。
「オレ、飯食べてないからチョット食てくるわ。出てきたら直ぐに連絡おくれ」
と、言い残してそそくさと青木はその店に入っていった。
ま、状況から考えても不倫グループは30分や1時間くらいは出て来ないという憶測は普通に出来るし、もしも出て来たとしても青木は1分かからずに戻ってこれる。
※探偵はいつも直ぐに動けるように、勘定を事前に済ませておくのは初歩の初歩。例えば、調査対象者と同じカフェやレストランに入った時も、ウエィトレスがコーヒーを運んで来た時点で支払っておく、そうすれば調査対象が急に立ち上がって出て行く時もスムーズに追えるからである。
青木は約20分もかからずに戻って来た。
「メッチャ美味いから、慌てて食べたら最後半分生やった」と笑いながらいう。
「交代でひとりずつ行っておいで、支払いは会社のカードですればいいから」
少し興奮気味に言う青木。
「じゃ、行って来ます」と先輩の梅田が次に生ラム屋さんに行った。
40分ほど、たっても梅田は戻って来ない。元々、普段の調査の時でも交代でご飯を食べに行くと、食通の梅田は戻って来るのが基本的に遅い。
1時間弱くらいで梅田が店から出てくるのが見て取れた。
その時、不倫グループ達が先ほど入った古びた焼肉屋からほろ酔いの様相で出てきた。
「中村アウト!」と青木が笑いながらいう。中村も半笑いで「大丈夫です」と返す。
不倫グループの動きを梅田も見ていて、調査車両には戻らず、不倫グループと並列の状態で少し身体をかわしながらカメラを回している。当然、調査車両の中からもシッカリとカメラが回っている。
焼肉屋の店前で不倫グループは立ったまま、談笑している。いつものことだが不倫している男女2人ならばそのまま止まらずに歩き出すのだが、こういったグループの場合に酔いも手伝って店前で談笑することは少なく無い。
余談だが。特にサラリーマンの団体の場合には10分以上、あれこれふざけ合って二次会に誰が行くのかなどを決めていたり、送別会のような場合には胴上げまで始まってしまい、探偵にとってはそれが邪魔で調査対象者が出てくるところが見えずらく、けっこう迷惑をする。
そうこうしているうちに焼肉屋の前で、不倫グループ達はタクシーを拾った。
梅田が小走りで、調査車両に戻って来て後部座席に乗り込んだと同時にタクシーは走り始めた。その後を調査車両がゆっくりと追う。タクシー尾行は本人の車を尾行するよりも断然簡単。運転手以外はルームミラーやバックミラーを見ないので、尾行には気付きにくい。
よほど世話焼きな運転手以外ならば、仮に同じ車がついて来ていると気付いても、客に「お客さん後ろから変な車が付いてきてますよ」なんてことは言わない。もし、それが運転手の勘違いなら、「この運転手大丈夫か?」と思われかねないし、また、探偵は尾行のプロ。尾行されるなどの警戒心の無いタクシーに気付かれる様な素人でも無い。
ただ、都心ならタクシー尾行の場合にはかなり接近する必要があるのも確かなこと。それは、車の量が尋常じゃないのと、タクシーは同じタクシー会社の車が、そこかしこに走っている。色も文字もほとんどが同じ。違うのはナンバープレートだけなので、ゆったりと尾行していると、いつの間にか違うタクシーと交錯してしまう可能性があるので、そこだけは結構 慎重になはなる。
タクシーは、不倫グループ達がチェックインしたホテル前で停まった。そしてそこで降りて来た不倫グループ達は、またなにやら立ち話をし、その後、依頼者の夫とそのパートナーの若い女性2人がホテルの玄関に向かい、社長と40絡みのパートナー女性は、歩いて暗闇の方へと歩き出した。狙いは依頼者の夫の方なので、社長達はそのまま放置。
その時、梅田は依頼者の夫カップルより先にホテルへ入り階段で3階まで上がる。そこでエレベーターのボタンを押して待つ。エレベーターが狭いのと、不倫グループ達の部屋は8階だということを事前に知っている梅田は、1階から一緒に乗ることを避け、このカップルが3階から乗り込んで来る梅田に対しては不自然さを感じないという、簡単なテクニック。
しかし、熟練の探偵にとっては簡単なテクニックではあるが、ポンコツ探偵には真似出来るワザでは無い。
梅田の読み通り、3階で一旦止まったエレベーターに乗り込んでもこのカップルは、つめの先ほども違和感はない様子で、梅田は8階の上、11階のボタンを押して、カップルの前へ後ろ向きに立った。
当然、8階でエレベーターは止まる。不倫カップルは梅田の横をすり抜ける時に「すみませ~ん」と言って降りて行く。2人が消えた後、梅田はエレベーターの(開)ボタンを押しながら、良きタイミングで8階でそっと降り、身体をかわせるところへ音も無く移動する。
こういったビジネスホテルは、客室フロアにはほとんど人は居ない。閑散としていて咳払いひとつ出来ない。梅田は身体を隠し、床のあたりまで下げたカメラのレンズだけをカップル達に向け、カメラのファインダーだけをみながらピントを合わせ2人が同じ部屋中へ入って行くところを撮って、表で待つ調査車両へ戻って来た。
注釈
仮に不倫カップルが何かのひょうしに、振り返ったとしても床の方に視線を向けることはまずない。
「部屋入って行くところ撮りました、部屋番号は8122です」と報告。
すると青木は、「中村くんお腹減ったやろ?」
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